約 1,319,976 件
https://w.atwiki.jp/meisineet/pages/52.html
名前:ゼロ010 加入日 2010/01/04 入会挨拶コメント よろしくお願いしますo^∇^oノ 本人からの一言 めんばー 最新のマメコメ ハンマーソングと痛みの塔♪2010/01/22 02 47 ハンマーソングと痛みの塔♪2010/01/21 14 41 もうちょっと生きたいな2010/01/19 23 42 始めましてスレ (。・ω・)ノ゙ コンチャ♪ http //circle2.hangame.co.jp/bbs/readArticle.nhn?circleid=C000108641 target.circleid=C000108641 target.bbsno=356440 target.docno=2301936 lastArticleListPage=38 lastBbsno=0 おみくじ ゼロ010の今日のサークル内での運勢は・・・、 失ったことは苦しいかもしれない・・・。 でも、その大切なものがくれた、幸せな想い出まで、苦しみに変えないで・・・。 お願いです・・・。 個人リンク(所有ホームページやブログetc) URL(リンク先が見当たりません) 成分結果 ゼロ010の43%は信念で出来ています。ゼロ010の41%は微妙さで出来ています。ゼロ010の7%は真空で出来ています。ゼロ010の4%はやらしさで出来ています。ゼロ010の3%は祝福で出来ています。ゼロ010の2%は野望で出来ています。 コメント欄 名前 コメント すべてのコメントを見る 合計アクセス数: - 今日のアクセス数: - 昨日のアクセス数: - メンバーリストへ 選択肢 投票 Good! (0)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5346.html
遊戯王デュエルモンスターズより海馬瀬人を召喚 ゼロの社長-01 ゼロの社長-02 ゼロの社長-03 ゼロの社長-04 ゼロの社長-05 ゼロの社長-06 ゼロの社長-07 ゼロの社長-08 ゼロの社長-09 ゼロの社長-10 ゼロの社長-11 ゼロの社長-12 ゼロの社長-13 ゼロの社長-14 ゼロの社長-15 ゼロの社長-16 ゼロの社長-17 ゼロの社長-18 ゼロの社長-19 ゼロの社長-20 ゼロの社長-21 ゼロの社長-22 ゼロの社長-23 ゼロの社長-24
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2436.html
とは言ったものの……マジにどーしたもんか。 吼えるミノタウロスを見たが、この勝負、かなり分が悪いのは間違いなさそうだ。 考えられるほぼ全ての攻撃パターンを予測しながら殴り合いをしなければならない。 さらに、こちらの攻撃はダメージにならず、向こうの攻撃のほとんどは防御ができない上、即死攻撃ときたもんだ。 とんだハンデ戦だが、一度やると言った以上はやらねばならない。 ……やっぱ、昔と比べると甘くなったな。 この手の事に関して後先考えないのは何時もの事だが、それはあくまで自分一人での話だ。 ペッシもペッシで気が弱いだけで、スタンド自体は強力だったから、直接的な戦闘面まで面倒見なくてよかったが 今のところ、スタンドのように飛び抜けた特徴の無いメイジと組むという事は、スタンド使いとしては実のところ結構やりにくかったりするのだ。 もちろん、汎用性はメイジの方がダントツで高いので、援護役としてなら打って付けだが 逆にメイジを主体にして、こちらが援護役に徹するとなると甚だ厄介だ。 特にグレイトフル・デッドのような能力特化型で汎用性もクソもない、能力の幅の狭いスタンドなら余計に向かない。 使い方が難しいという意味ではパープルヘイズと良い勝負だ。 ともあれ、五分だ。 それを過ぎれば、タバサがミノタウロスを倒せなくても老化で始末する事ができる。 だが、その五分が長い。 普段ならなんでもないような僅かな時間だが、得てして死が隣り合わせの状況ではその五分が数倍にも長く感じてしまうものである。 たかが五分。されど五分。その間、ミノタウロスを引き付けながら一発も貰わずに切り抜ける。 報酬も出ないのだから、負傷などもっての外だ。 もっとも、負傷で済めばおつりがくる方だろうが。 「なるように……なりやがれ!ド畜生がッ!!」 後の事なんざ、考えるだけ無駄だ。 半ばヤケクソ気味にプロシュートが叫ぶと全力で、ミノタウロスの鼻っ面をブン殴った。 殴ったと同時に、スタンドを介してその感触が手に伝わってきた。 相変わらずの、生物を殴ったような感触じゃあなかったが、そのまま拳を振り抜く。 殴られた勢いで、涎を撒き散らしながらミノタウロスの顔が横を向いたが目が合った。 殴られながらも、いやに光る血のような赤い目だけは、こちらを凝視している。 瞬間、冷たい物が背中を伝った。 ――ヤベェ、避けねぇと殺られる。 ミノタウロスの顔がゆっくりと正面へと戻ったが、頭では分かっているのに、時間でも止まったかのように身体の動きがやたらと遅い。 ――なにやってやがる。動け。 棒切れでも持ち上げるかのように、緩やかに大斧が上へと上がっていっても、身体が動くまでに妙に時間が掛かる気がする。 ――動けっつってんだろうが。 持ち上げられた大斧と、赤い月とが重なった。 ――もう見慣れた色だが、今日は血の色みたいに染まってやがる、クソったれが。 「ゴフ、ヴオオオオオオオォォォォムッ」 月と重なっていた大斧が消えると、それと同時に、雪が溶けるかのように身体が動くようになった。 どうやら、ボクサーとかが相手のパンチが超スローモーションで見えたりするようなやつだったらしい。 アドレナリンやなにやらが分泌されて 一瞬が何秒にも感じられるというあれだ。 なら、斧がどこに行ったか?決まってる、そんな事考えるまでもない。 バックステップで飛び下がると同時に、大斧の刃先が額を掠めた。 地面に大斧がめり込むと同時に、額が裂け、そこから派手に血が噴き出る。 「――ッ!クソがッ!掠っただけでこれかよ!」 それでも、声に出すより身体が先に反応してくれてなによりだ。 あと少しでも退くのが遅れていれば、真っ二つか、中途半端に頭を割られていた。 生憎と、どこぞの吸血鬼みたいに、縦に真っ二つに掻っ捌かれても平気で、『ンン~?』とか言いながらズレを直したりするような特技は持ち合わせていない。 額に手をやったが、血は止まりそうになかった。 傷自体は大した事はないが、額からの流血は結構流す量が多い。 目に血が入ったりで視界が奪われるというのが最悪なパターンだ。 「にしても、マジで殴ったのにダメージ無しか……。人間なら首の骨がヘシ折れてるとこなんだがよ」 死ぬとまでは思っていなかったが、ダメージを受けた素振りも見せず反撃してこられたのは、スタンド使いとしての自信が失せそうだ。 血で塗れた手を一度払ったが、鉄臭い嫌な臭いがプンプンする。 血の中にメタリカでもいりゃあ、まだ使い道はあるんだがな。と、思わないでもないが、こればかりは無い物強請りなので考えるだけ無駄だろう。 ミノタウロスの注意は完全にタバサからプロシュートに切り替わったものの、面倒なのはこれからだ。 滅多にない貴重な体験させてもらったが、そうそう何度も体験したいものでもない。 プロシュートの記憶にあるうちでも、似たような経験はブチャラティ諸共列車の外に放り出された時と、リゾットがマジでキレた時だ。 普段、キレないやつが一度火が付くと手が付けられなくなる良い見本だろうか。 ギアッチョなんかより遥かに性質が悪かった事は今でもはっきりと覚えている。 原因まではよく知らないが、ギアッチョとメローネがカミソリと針の山に沈み、黄色い血液を流してブッ倒れていた。 傍に立つリゾットの目を見た時も、さっきみたいな状態に陥った。 ただでさえ黒いリゾットの眼が、いつもよりドス黒くギラギラと光っていたのは、後にも先にもあの時だけだ。 後で、鉄分を戻してもらいなんとか病院送りにはならずに済んだものの あのギアッチョとメローネが借りてきた猫のように大人しくなっていた程だ。……一月と持たなかったが。 とにかく、あの目が拙い。 殺意丸出しのギラついた目だけは、プロシュートですら慣れるものではなかった。 そもそも仕事は暗殺なのだから、そんな物は邪魔なだけだ。 何時も言っていたが、ブッ殺すと心の中で思ったなら、その時にはもうスデに相手を殺っちまって終わっている。 殺しをあくまで仕事の手段として割り切るか、殺し自体が目的になってるかの違い。対比するなら暗殺者とトチ狂った殺人鬼というところか。 もっとも、傍目から見ればどちらも似たようなものだろうが。 この場合、プロシュートは前者で、ミノタウロスは後者になる。 獣相手に殺人鬼というのも妙な話だが、あの赤く染まった目を見てからやたら違和感を感じ、変な具合だ。 強いて言うなら狂気とでもいうのか。薬キメて頭のネジが二、三本ブッ飛んだジャンキーのやつとよく似ている。 違和感を気にしている余裕は無いのだが、歯の隙間に挟まったトマトの皮みたいに妙に引っかかっていた。 ちらりとタバサを見たが、少し首を横に振られた。 「ちッ……まだか。五分持たねーぞ、こいつは」 なにせ、今ので三十秒足らずというところだ。 さっさと、ミノタウロスをぶち殺してくれればもっと早く済むのだが、それはあまり期待できそうにはない。 さて、次はどう出るか。 プロシュートが地面から大斧を引き抜くミノタウロスを注意深く観察したが、大斧を引く抜くとミノタウロスがそれを地面に捨てた。 大きな音を立てて大斧が地面に落ちたが、大斧を捨てた理由を察したプロシュートの顔が歪んだ。 「ッ!この……ド畜生がァァァァアア!」 半ば、から完全にやけくそ気味に叫ぶと、ミノタウロスから一気に離れる。 次の瞬間には、ミノタウロスが叫びながら拳を固めて突っ込んできた。 今まで大斧だったからこそ、大振りで避けるのも難しくはなかったが、得物を捨て素手で向かってきたという事はそれも難しくなった。 ミノタウロスが拳を繰り出し、それが空を切る度に風がプロシュートを襲う。 風自体はそう大した事はないが、風が届く程のパンチだ。マトモに食らえばミンチより酷い結果が待っているに決まっている。 今ほど、グレイトフル・デッドに脚が無いのを恨めしく思った日はない。 一般的な近距離人型スタンドならスタンドの脚力を生かして跳ぶ事も可能だが、グレイトフル・デッドにあるのは、うねうねと動く触手だけだ。 移動に関してのスピードは本体に付いてくる程度、つまりは人間並みなので、猛然と突っ込んでくるミノタウロスとどっちが早いかなど答えるまでも無い。 それでもグレイトフル・デッドでラッシュを辛うじて凌いではいるから、あるだけマシというところだろうが 早々に限界に達したのか、反らしながら凌いでいたスタンドの腕が弾かれプロシュートへと一気に突っ込んできた。 「生身でスタンドを弾きやがっただと!?バケモンがッ!」 もう分かりきっていた事だが、それでも生身でスタンドを弾くなどスタンド使いの常識では考えられない。 焦りながら後ろも見ずに下がっていたせいか背中に硬い物が当たり、それ以上後ろに下がれなくなった。 「このクソヤバイ時に……!」 多少開けている場所とはいえ、森の中である。そんな場所をろくに見もしないで動いているのだから、木にぶつかるのは当然の事だ。 注意不足と言えばそれまでだが、この状況下でそんなもん気にしてられる方がどうかしている。 動きが止まったプロシュートを逃がすまいと、ミノタウロスが涎を垂らしながら殴りかかろうとしてきている。 舌打ちをしながらプロシュートが側転するかのように横に跳んだが、それと同時に爆発でも起こったかのような音が鳴った。 ミノタウロスの拳と、木の幹がぶつかった音だ。 メリメリと音を立てながら殴られた箇所から折れていったが、 それなりの太さの木を、HBの鉛筆をボキリとヘシ折るかのように軽く折った事には、さすがのプロシュートも舌を巻かざるを得なかった。 もっとも、今はただ驚いているわけにはいかない。 避けたはいいものの、転がるように飛んだせいで今の体勢が非常に悪いのだ。 咄嗟という事もあってかスタンドも出してはおらず、なんとか地面と熱いキスをする事なく前転着地をするので精一杯だった。 当然、それをミノタウロスが見逃すはずがない。 ごふ、ごふ、と白い息を吐くと、転がっているサッカーボールでも蹴り上げるかのように突っ込んできた。 狙いなぞろくに付けていないだろうが、あのデカブツの蹴りをマトモに食らったら良くて再起不能、悪ければ死ぬ。 だが、下手に避ければ余計に状況が悪くなる。ここは突っ切るしかない。 「ぶぅぅぅるぁぁぁぁぁああ!」 ミノタウロスの蹴りが完全に振り抜かれるより先に、プロシュートがあえて前へと突っ込んだ。 並みの近距離人型スタンド使いなら、当たる瞬間後ろにでも飛ぶのだろうが、移動はあくまで本体依存。 精密動作に関してもEなのでそこまで器用な芸当ができるわけじゃない。 なら、蹴りが振り抜かれるより先に突っ込んで、完全に威力が出し切られる前に食らった方がいくらかマシだと賭けたのだが どうやら、規格外な相手には規格外な出来事ばかり起こるらしく、ガードした腕に当たった瞬間、鈍い音がするとプロシュートの体が勢いよく飛んでいった。 衝撃で意識がぶっ飛びそうになったが、サッカーボールよろしく蹴り飛ばされた事でそれは耐えられたものの 今更ながらミノタウロスを少し甘く見ていた事を盛大に呪った。 老化使えばすぐなんだが……使わなけりゃあこのザマかよ! 並大抵の相手なら、老化抜きでもどうにかなると思っていたが、見通しが甘かったらしい。 「っぅ……がぁ!……っはッ!…はッ!……パワー馬鹿が……!スタンド使いじゃなけりゃあ死んでたぞ、今のは!」 右腕を押さえながらなんとか立ち上がったが、間違いなくバキバキにヘシ折れている。 スタンドでガードして、その上から一本持っていかれた。 おまけに、喉の奥から熱いものが込み上げてくればなにかと思い、口の外へと出してみれば酒と胃液混じりの血だった。 生身で受けていれば、腕どころか内臓破裂コースで致命傷を受けていた可能性が高い。 「腕、大丈夫?」 後ろからタバサの声が聞こえてきたが、そこまで一気にふっ飛ばされた。 そういえば、吹っ飛ばされてる途中に勢いが弱まって地面への激突のダメージも無かったから、レビーテーションあたり使ったのかもしれない。 「クソ……!マリオやってる気分だ。キノコ食って増えるわけでもねーのによ」 ミスれば一発で死ぬ。状況は似ているが、こっちは残機1でコンテニュー不可能である。 スターよこせ、スター。とか髭面のおっさんにたかりたくなってきたが、そんなくだらない事を考えられるあたり、まだ余裕はあるようだった。 「オレの事より、お前はどうなんだよ。腕もこうだし、悪いがそろそろリミット近いぜ」 時間的な限界ではなく、腕の負傷と予想以上にミノタウロスの力が上だった事も加えて、プロシュートとて能力抜きでは抑え切れそうにない。 「突破口は見つけた。……でも、成功するかどうかは、やってみないと分からない」 「そんだけ分かりゃあ上出来だ。それに、ミスるかもってんで何もしねーマンモーニだったか?オメーは。ここまでやられたんだからな、後始末ぐらいオレがしてやる」 タバサが失敗すれば、腕の礼も含めて全開の老化を叩き込むだけの事だ。 いいからやれ、と言われタバサも腹が決まったのか、小さく頷き了承の意を見せる。 「出来れば、少しの間動きを止めておいて欲しい」 メイジでもない人間にミノタウロスの動きを止めろなどとは随分と無茶な要求だが、止めるだけならやり様はある。 「二度目はねーぞ、一発で決めろ」 もうミノタウロスがこっちに向かって突っ込んできている。 同じ手は通用しない。足止めも攻撃も文字どおり一発で決めねばならなかった。 魔法を詠唱される事を察知してか、向かう先がタバサになっている。 素手で怪我したメイジでもない人間など相手するまでもないという事だろうが、人間でも獣でも手負いというのが一番厄介だ。 プロシュートがミノタウロスの前に躍り出ると、ミノタウロスと接触する前に隠し持っていたナイフで折れている右手の動脈を深く切った。 「ハッ!どうだ、この血の目潰しはッ!」 勢いよく吹き出た血がミノタウロスの目にかかると、目を押さえて暴れだし動きが止まった。 どうせ使い物にならないのだから、今更動脈の一本や二本切ったところで大して悪化はしない。 このまま、『勝ったッ!死ねぃッ!』とでも言おうものなら、逆にやられそうだが後はタバサの仕事だ。 目を押さえ、暴れていたミノタウロスがどうにか血を拭い目を開けてみると、目の前には氷の矢が形成されている。 その光景は、どことなくジェントリー・ウィープスを彷彿とさせるものがあったが、違うのは防御に使うか攻撃に使うかというとこだろう。 音も立てずに飛んだ氷の矢がミノタウロスの目に突き刺さると、何か潰れるような嫌な音が聞こえた。 いくらミノタウロスの皮膚が硬くても、目だけは硬いはずはない。 そして、その目の後ろにあるのは脳。眼底をウィンディアイシクルでぶち破り、一気に脳をシェイクする。 動き回るミノタウロスの目という小さな場所に寸分違わず命中させるのは少し難しく、一瞬動きを止める必要があった。 「ブヴルゥ……オ…オオオオオオオムッ!!」 咆哮。血に染まった氷の矢をミノタウロスが引き抜こうとしている。 首を飛ばしても動くと言われているだけの事はある。 それでも半分頭ブチ抜いてるのならまぁ及第点というところか。あれで死なないのなら、大したものだ。 「さっさとくたばんなッ!ダメ押しに、もいっぱぁぁぁぁぁぁぁぁつッ!」 残っている左腕で、引き抜こうとしている氷の矢を杭を打ち込むかのように殴りつけると、少しめり込むと同時に砕けた。 「ぶご……オバァァ……」 ミノタウロスの残った目から赤い光が消えると、呻く様な声を出しながら倒れていった。 ようやく動かなくなったミノタウロスを見て一先ず息を吐いたが、得た物より払った物の方が大きい。 腕一本と引き換えに得た物はタバサの経験と三エキューに満たない報酬。 ヘシ折れた腕を見て思わず溜息を吐いた。そのぐらい出したって誰も文句は言わないはずだ。 「今のは悪くねぇが、こういうのとは最初から戦らねぇか他のやつに任せとけ。ったく…相性が悪いやつと戦っても何の得にもなりゃしねぇ」 「善処する」 「どんだけ分かってんだかよ」 相変わらずの調子で返してきたタバサを見て、こいつひょっとして狙ってやってねーか?とか浮かんだが、たぶん考えすぎだろう。 それに、こうなったのは誰のせいでもなく、自分の責任である。 能力を使わずとも足止めぐらいならどうにかなると甘く見ていた。 その結果がこれだ。 まさか伝説上のバケモノとやりあうハメになるとはほんの数時間前までは思いもしていなかったし、生身でスタンド以上のパワーを持つなどとは頭の中にすらなかった。 つくづくブッ飛んだ世界だと改めてそう思う。この先もこんなのが出てくると思えば今のうちにこういうのに出会えてよかったかもしれない。 ここは、タバサの経験も踏まえて、自身も良い経験を得たという事で納得しておく事にした。 「にしても、この腕どうすっか…」 腕の状態はかなり悪い。数箇所から折れていて普通なら病院送りコースである事は容易に理解できる。 もちろん、魔法で治せばすぐだろうが、少なくともこの辺りでは治療できないだろうし、最悪リュティスまで戻る事も考えねばならなかった。 「……心配しなくても…いい。わ、わたしが治…そう」 突然どこからか聞こえてきた声に、誰だ?と疑問符が浮かんだが、考えるより先に体が動いた。 「この…ッ!まだくたばってねぇのかッ!」 また動き出したミノタウロスを見て、すぐさまスタンドを出した。 ここまでくるとプラナリア並みの生命力だといっそ賞賛したいぐらいの気になれるが、ただ感心しているわけにもいかない。 直触りで確実に仕留める。念には念を入れて千年分ぐらいは叩き込むつもりだったが、それをやる前にさっきの声がまた聞こえてきた。 「イル・ウォータル……」 特に魔法には興味無かったが、一通りの呪文の詠唱はプロシュートも覚えている。 詠唱の種類さえ分かればどんな攻撃がくるか事前に察知できるのだから、多少面倒だがやっておいて損は無い。 それで現在進行形で聞こえてくる魔法は水系統の治癒の魔法だった。 わざわざ秘薬も使わず精神力削ってまでそんな魔法を使おうとしてるのは誰かという事になるのだが どうも、この声は聞いたような事がある気がする。 それもごく最近……というより聞いたばかりという具合だ。 さっきまで暴れていたミノタウロスが大人しいというのも妙だった。 いつの間にか大斧を拾っているのだが、手負いの獣といったら普通の時より暴れまわるというのが相場である。 その不自然さもあってか、すぐに直を叩き込まないでいたものの、詠唱とミノタウロスの口の動きが合致している事に気付いた。 「おい……こっちの牛も韻竜ってやつみたいに話せんのか?」 言葉尻に、そこまで常識外れじゃねーよな、という意味を含ませてタバサに聞いた。 タバサもこいういうのは見たことないようで、知らない、と小さく呟くと首を横に振っている。 プロシュートが知る限りでは、一番物知りっぽいタバサが知らないのなら、本来ミノタウロスは喋らないものなのだろうという事にした。 だが、現実にミノタウロスの口から呪文の詠唱が聞こえてきている。 どういう事か分からず、少しの間思考回路がフリーズしていたが、呪文の詠唱が終わりミノタウロスが近付いてくると流石に我を取り戻して身構えた。 「ああ……少しの間…ごふ!…動かないでくれ。すぐ終わる」 咳き込むような声をミノタウロスが出すと、手に持った大斧をプロシュートの腕に向ける。 これが刃先だったら、ド畜生がッ!とでも言われながら直を叩き込まれるところだったが、幸いにして大斧の頭の方だったのでそういう事態にはならずに済んだ。 それから少しすると、腕の中の方で骨が繋がっていく感覚が理解できる。 正直言うと気色悪い。それでも治るのであれば遠慮なく受け取っておくとしても、問題なのはこのミノタウロスの正体だった。 人の言葉を話し、おまけに魔法まで使う。秘薬無しでここまでの治癒の魔法を使えるという事はトライアングルかスクウェアか。 となると、こいつは新種か突然変異の類である事は明白。生け捕りにでもして売り飛ばせば金になる。そういえば、アカデミーとかで実験とかしてたな。 一瞬本気で始末するのを止めて、生け捕りにしようかとも考えた。 今のミノタウロスを見るプロシュートの目は、きっとあの人攫いたちと同じような目をしているに違いない。 「この姿を見て不思議…に思うだろうが……時間も残り少ない…ようだし簡潔に、は、話そう。わたしは、元は……いや、今もだが、貴族だ」 「ほー、牛にも貴族が居んのか、そりゃあ驚きだ」 ものスゴク適当に返したが、ぶっちゃけ、この牛の正体なぞ知った事ではない。 さっきまで、文字どおり獣のように暴れ回っていたくせに、今はその気配すら微塵に感じられない。 どちらにしろ、サッパリ分からん。 いっその事、始末して喋らなかった事にしちまおう。 そんな物騒な考えが頭の中で鎌首をもたげた。 さっきまであれだけ好き放題やらかしていたのだから、始末しても問題ないな、と行動に移すためにスタンドを出す。 腕は治ったものの、あれだけやられて、ハイ、そうですかと黙って話を聞くようなタマではないのである。 それでも、辛うじて思いとどまったのは、直を叩き込む前にタバサが言った言葉だった。 「……禁術。恐らくあなたの系統は水」 それを聞いて、ミノタウロスの口元が少しだけ曲がった。 たぶん、笑ったのだろうが、一般的に笑うことのできる動物は人間だけだと(あくまでも地球基準で)言われているだけあって、少々分かり辛い。 「そうだ…十年前、村を襲っていたミノタウロスを倒した当時のわたしは、不治の病に侵されていた……その時、この身体を見たわたしは人間を止める決意をしたよ…」 妙な仮面を被った男が、俺は人間を止めるぞ!ジョジョォーーーッ!とか叫んだような気がしたが、気のせいだ。 「禁忌とされる脳移植を、わたし自身の手…で行ったのだ」 随分とブッ飛んだ告白だが、タバサはともかくプロシュートはもうスデにろくに聞いちゃいなかった。 脳移植とか、普段絶対にありえない事をやったと聞いて、拒否反応云々とかに関しては、もう考えるだけ無駄だと考えるのを止めただけだったが。 「それで、さっきまでのありゃあなんだ。能書き垂れるのはいいが、答えによっちゃあ消すぞ」 兎にも角にも、こいつが元人間であるという事は理解できた。 そこで重要なのはこいつが始末すべき対象か、そうでないかだ。 「……三年程前からかな。それまでわたしは、この身体の事を心底素晴らしいものだと思っていた。 この身体を得てから、体力、生命力はおろか、精神力も強くなり、スクウェアクラスにまで成長した」 どうりで秘薬も無しに腕が治るわけだと、その点に付いては納得できたものの、まだ答えになってはいない。 「で、それがどうした」 長ったらしい前置きはいいから、結論を先に言えと促すと、咳き込みながらミノタウロスが答えた。 「だが……違った。わたしの人としての心は強くは無かった。だんだん、自分の精神がミノタウロスに近づいていくのが分か…ったよ。 耐え難い頭痛がわたしを、お、襲う…と、意識が途切れ、気付いた時には、足元に子供の骨が散らばっていた……」 「ああ、あれは誘拐じゃなくて、オメーが食ってたのか」 酒場で聞いた子供の誘拐の犯人は、このミノタウロスだったらしい。 ついでに原因が分かって、そっちの件も一件落着というところだが 子供を食べたという事に特に何の感情も表さなかった事に、ミノタウロスが逆に驚いていた。 「驚かないの…か?」 「オメーなんぞより、ろくでもねぇ連中なんざ五万といるし、オレもその中の一人だ。これでいいか?」 生きるために食ったのなら、それはそれで仕方ない。例え自我を失っていてもだ。 仕事で巻き込んだやつなぞ数え切れるものではない。大人子供老人性別の区別無く巻き込んできた。 そんな仕事をしていたからこそ、このミノタウロスがやった事に関して特に感情を表す必要は無かった。 例えあったとしても、やっちまったもんは仕方ねぇな、ぐらいなものだろうが。 「奇妙なものだな。お前のような人間は初めて見る……、ごふ!ごほっ!……ああ、頼みと言ってはなんだが、決闘を、貴族同士の決闘をしてくれないか?」 貴族同士という事は、決闘を申し込んだ相手はタバサという事になる。 この期に及んで決闘とはどういうつもりか真意を測りかねたが、その理由は尋ねる前にミノタウロス自身の口から 「頭痛が起きるようになって…から、自分で死ぬことも考えた。しかし、己で自分の命を絶つ勇気がわたしには無かった。 おかしなものだな……十年前、不治の病に侵されていた時は、ミノタウロスと戦って死ぬ事にこれっぽっちの恐怖も感じなかったというのに…… この傷は、君が付けたものだろう?それ程の腕があるなら、さぞかし名のある貴族と見た。獣ではなく……わたしが…わたしでいられるうちに戦ってもらいたい…」 自分勝手と言えば自分勝手な申し出だが、あくまで申し込まれたのはタバサだ。受けるかどうかは本人次第で、やると言えば止める理由も特に無い。 今ならさっきと違って、少なくとも一発でミンチみたいになりはしないという事で、どうするかタバサに聞いた。 「どうする、やんのか?」 小さくタバサが頷くと、杖を構える。 それを見ると、ミノタウロスも大斧を杖のようにし、タバサの真正面に対峙した。 「礼を言…うぞ、少女よ。わたしの名は……ラスカル。名を聞かせても…らおう」 名を聞かれ、少し目をつぶると、タバサが小さく己の本名を呟いた。 「……シャルロット」 「よい…名だな……。いざ勝…負だ」 巻き込まれては洒落にならんと、プロシュートは少し離れて決闘の様子を眺めていた。 トライアングルのタバサと、妙ななりとはいっても、スクウェアクラスのラスカル。 魔法勝負ならどうなるかと見物とシケ込んでいたが、いつまでたっても互いの杖から魔法が放たれる事はなかった。 面白くもないので、石でも投げ込んでやろうかと思った時、不意にタバサが杖を下げてこちらに歩いてくるのが見えた。 「選手交代には早ぇんじゃあねーのか?」 あくまで、タバサが受けた決闘である。一度受けたのなら一度ぐらいやり合えと言おうとした。 「もう終わった」 どこか、ぼんやりとした声でタバサが終わったと言った。 一度も魔法が出てないのに終わったと言われてもどういう事か分かるはずはない。 だが、タバサに説明を求める前に、プロシュートにも終わったという、その言葉の意味が理解できた。 ラスカルの残った片目からは光が完全に失われ、口や鼻からは血を流し微動だにしていない。 「こ、こいつ……立ったまま……死んでやがる…!」 目に刺さった氷の矢を押し込んだ、あの一発。やはりあれが致命傷だったのかと確信した。 恐るべきは、脳を貫かれても生きていたという事だ。 もしかしたら、その時点でスデに死んでいたのかもしれない。賞賛すべきはラスカルの貴族としての執念と言うべきか。 ともあれ、これで任務完了。 そう思うと急に疲れが押し寄せてきた。 なにしろ今日の日程は相当な強行軍である。 早朝は学院でメンヌヴィルを相手にし、そこからガリアまで一気に移動。おまけに人攫いとミノタウロスを相手にした。 休んだのは酒場で飯を食った時ぐらいで、酒も入っているのでさっさと寝たい。 ここから村に向けて三十分歩くとなると気が重くなって仕方ない。 それでも、こんな所で寝るわけにもいかず仕方ねぇとする事にしたが、青い頭がゆらゆらと揺れると、すとん、と擬音がしそうな程に下に下がって動かなくなった。 「おい、どーした」 特に攻撃を食らったわけでもないから、怪我ではないと思いつつタバサに近寄る。 そうすると、動かなくなった訳がプロシュートにも分かった。 「こいつ……寝てやがる」 酒こそ飲んでいないが、タバサとてプロシュートとほぼ同じ日程をこなしたうえ、魔法も使っている。 精神力と言うか、この場合は体力的に限界に達したらしい。 今ならば、やれやれだぜ、と言っても何の不思議も無かった。 こっちも頭から血を流し、さっきまでは腕もヘシ折れていたというのに、手間ばかりかせさせてくれる。 それでも置いていくわけにもいかず、大きくため息を吐くと、プロシュートがタバサを背負った。 シルフィードとタバサは似てないと思っていたが、撤回せねばなるまい。 無頓着というか、こういう所は世界が二、三巡した感じで似ている。 村に戻る前に、立ったまま息絶えたラスカルと目が合った。 杖代わりの大斧を貴族のように構えたまま遠くを見ている。 脳を移植して、精神がミノタウロスに近付いていく様など、プロシュートに理解できるはずもない。 それでも、自己の崩壊というものがどれだけヤバいものかというぐらいは知っている。 麻薬の打ち過ぎで廃人になった人間なぞ見れたものではない。 死ぬ間際でも、己を取り戻せたのだから、ラスカルは運が良かった方だ。 「ハタ迷惑なヤローだったが……良かったな。くたばる前に貴族に戻れてよ」 動かなくなったラスカルにそれだけ言うと、プロシュートが村へと戻っていった。 ←To Be Continued
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2321.html
沈みかける太陽をバックに何時ものようにシルフィードが進んでいる。 ただ、何時もと違うのは二人ほど余分に……元ギャングと現役盗賊が乗り込んでいる事である。 タバサは相変わらず本に視線を落とし、他二人はやる事も無いので……適当にしている。 しばらく何事も無かったが唐突にかつ盛大に『ぐぎゅるぅぅぅぅ』という音がした。 「……予想は付くが、一応聞いてやる。こいつは何の音だ」 地の底の亡者の声もとやかくというか、今居る下の方から聞こえてきたのだ。九割九分あの音だろう。 「おねえさま、おにいさま、シルフィはおなかがすいたのね。きゅいきゅい!」 予想的中。シルフィードの腹の虫が盛大に抗議声明文を発表したようだ。 なおも喚きたてるシルフィードにようやくタバサが本から目を少しだけ離すと あらかじめ用意してあったのか、なにやら妙な形の塊をシルフィード口目掛け放り投げた。 シルイフィードがパクリとそれを飲み込むと全身が揺れる。 「ッ!……っぶねぇな。落とされんのはゴメンだぜ、オレはよ」 ヴェネツィア超特急ですら本来なら致命傷のはずだったのに ここから落とされれば、怪しい中国人に言われなくともまず間違いなく死亡確認である。 無論、そんな事知らないシルフィードは気にせず騒いでいるのだが。 「お肉かと思ったのに騙されたぁ~~~!偽物なのね!紛い物なのね!おねえさま酷いのね!」 べっ!と口の中からモノを前足で器用に取り出すと本を読んでいるタバサの前に突き出す。 しかしながら、御主人から帰ってきた言葉は淡々かつ簡潔なものだった。 「食べられる」 「でも、まずいのね!おいしいわけがないの!お肉の味はするけど、お肉じゃない!偽物なのね!」 「それって確か、最近出回ってる魔法で肉の味を付けたっていうやつじゃあなかったっけ」 「……マジでなんでもあんな」 モノを見てフーケがそう言ったが、魔法が生活面にそこまで直結してる事に本気で呆れてきた。 「やっぱり偽物だったのね!おねえさまもおにいさまも食べてみれば分かるのね!」 ……それはひょっとしてギャグで言ってるのか? 一応、さっきまでシルフィードの口の中に入っていたモノであり つまりは、結構ッ!そのモノはシルフィードの涎でベトベトだァ!なわけで美味い不味い以前の問題である。 「おい……オメー食ってみろ」 「……わ…わたしが…?……か…い…今まで、こいつの口の中に入ってモノを?絶対にイヤ!おにいさまが食べてやりゃあいいじゃあないか!」 「オレだって嫌に決まってるだろーが」 そうキッパリと言い放つが相変わらずだ。 「さっきもそうだったけど自分が嫌なものを人にやらせるなッ!どおーゆー性格してんのさあんたはッ!」 泣きそうなフーケと平然としたプロシュートを背景に、タバサがモノを少し千切って食べた。 「食べられる」 それでも淡々としたタバサに抗議を続けているが、なしのつぶて、ぬかに釘、のれんに袖押し、という具合に全く手応えが無いようだ。 「食べる、食べられないとかいう問題じゃなくて シルフィは美食家なのね!主人は使い魔の食べ物に責任を持つべし。使い魔として当然の権利を要求するのね!」 そのやり取りを見て、どーもどっかで知ったような情報だと思ったが、ブチャラティチームの略歴とスタンド情報を見ていた時だと気付いた。 確か、ミスタのピストルズが飯食わさないと働かないとかいう記述があったはずだ。 特に戦闘に直結しない事項だったので、さして気にも留めなかったのだが、今頃思い出した。 「む!おねえさま。風韻竜はあそこに街を発見 尖塔とか寺院とかあってなかなか素敵な街なのね。という事は、素敵な街には素敵な名物があるのが常識なのね~~」 「時間とお金が無い」 不味くなけりゃあ特に何でもいいプロシュートとてイタリア人である。 イタリアと言えばご存知イタ飯で有名な土地であり美味い物など、それこそ星の数ほどあるのだ。 だからまぁ、シルフィードの言わんとする事も分からんでもないし、相応の仕事をさせるには相応の対価が必要だという事は何より自分が一番知っている。 「ピストルズかオメーは。だがまぁ、連中みてーに途中で働かなくなるってのもオレが困る。食った分はキッチリ働けよ」 「きゅい!?さすがおにいさまなのね!そこの本の虫娘とは大違いなの。シルフィおにいさまの使い魔になりたかったのね!」 「あまり甘やかすと後で色々と困る」 そうタバサが言ってきたが、当のプロシュートは涼しい顔で返した。 「……アメと鞭って言葉知ってるか?」 (こいつ、一体どんな無茶な事させるつもりだろう……) アメと鞭。言い換えるなら貸しがシルフィードに出来たという事で一体何倍にして返すハメになるだろうかと理解したフーケが少し同情した。 まぁ自分も同じような状況にあるのだが。 もっとも、悲しい事に今のところアメは無く鞭のみで負債を返し続けているような状況だ。 あっれあれー?それってもしかして今のわたしって韻竜といっても畜生以下の扱い? おっかしいなぁ……なんだか目から水が出てきたや。ハハハハ…… ますますダークサイドへ突っ走っしっているが、今ならばどこかで犬と呼ばれている少年と一発で仲良くなれるだろう。 なにせ、今のところ報酬は『取られるはずの自分の年』であり、他は何も無い。 一度ならず二度までも攻撃を仕掛けたというツケの代償が高く付いた結果なので残念な事に中途解約もできないのである。 魔法学院に盗みに入った結果がこれだよ!!! まんじゅうのようなナマモノがそう叫んだような気がしたが、たぶんいつもの幻聴だ。 もういっその事『ヘヴン状態!』とでも叫びながら現実から逃げたくなってきたのだが、そんな事をやらかせば間違いなく周りから『少し可哀想な人』という称号を頂いてしまうし、まだそこまで堕ちたくはないのだ。 それに短い間だが、一つだけ確実に分かった事があった。 こいつは全体的に他の人間を、特に年下を自分より下に見る傾向がある。 見下すとかそういうのではなく、ただ単に実力や精神的覚悟が足りてねーと思っている節が見てとれる。 こういう奴と対等な立場になるには一つしかない。 実戦やらで実力を認めさせるか、タイマン張って互角以上の勝負をするとかそういうやつだ。 後、一度敵と判断すれば誰であろうとものスゴク容赦ない。おまけにドSだ。それも自覚が無いという一番性質の悪いやつの。 その割りに、案外甘いというか面倒見が良いところがあるから分からないもんである。 まぁそれが元敵である自分に一片の欠片も向けられていない事に、この先精神的に無事にアルビオンまで戻れるかとメチャ不安ではあるのだが。 「おい、なに縮こまってやがる」 上の方から聞こえてくるやたら高圧的な声がしたが、どうやら無意識のうちに膝を折り曲げ顔を埋めた、いわゆる体育座りのポージングになっていたらしい。 その声にギギギと錆付いた機械のような音が鳴らんばかりにゆっくりと首を上に向け口を開いた。 「……一体誰のおかけでこうなってると思ってるのさ」 「少なくともオレじゃねーな」 やっぱ自覚無しかこいつ……半分死んだ目でプロシュートを見たが、恐らく文句を言ったところで『てめーの自業自得だろボケ』で済まされてしまう。 そう確実!オスマンがセクハラをするぐらい確実! そんな分かりきった事に労力を使うぐらいならまだ言わない方が遥かにマシだ。少なくとも現状より状況が悪くなる事は無い。 ……きっと。 最高と最悪という言葉があるが、この二つはかなり違う。 フーケ自身、最高にはある程度上限はあるが、最悪という状況に際限は無いという結論に達していた。 というのも、ほんの半年前までは『土くれのフーケ』としてハルケギニア中の貴族から恐れられていた大盗賊だったのである。 それがこいつに捕まった上に二目と見れないような姿にされ、ワルドに半強制的にレコン・キスタへ入れられ、挙句またこいつに捕まった。某連邦の外部組織のエリート中尉も真っ青な転落っぷりだ。 クロムウェルの事があるから一応自主的に協力する事にはなったが、もう少し待遇というか扱いを良くしてもらいたい。元敵とはいえせめて人並みに……。 また少し丸まっていると、後ろから首根っこを掴まれブン投げられた。 「へ……?いや、ちょっとここ竜の上……」 やっぱり始末する気か。いやこいつの事だから『オメーら空飛べるんだから問題ねーだろ』ぐらいにしか思ってないのか。 メイジだって急にこんな事されれば対応できないんだぞー。このドグサレがァァァァァァァ!! と0.5秒の間にそんな走馬灯めいた事を一気に考えたが、予想より遥かに早く、そして柔らかい衝撃を受けて落下が止まった。 「呆けてねーで早く降りろ」 その言葉に辺りを見回したが、どうやらシルフィードはとっくに地面に降りていたらしい。 「……だからって投げることないじゃないか」 「草の上なだけマシだろーが。それとも土くれだけあって堅い地面のが好みか?」 「そりゃどうもありがとよ」 消耗しない…こいつはこういう奴なんだからマチルダお姉さんはこの程度で消耗しない……。 この程度の事で消耗していたら、そのうち何も無いのに定期的に血反吐とか吐く羽目になる。 中の自分にそう言い聞かせながら、少々力なく立ち上がり身体に付いた草を払っていると後ろから呪文が聞こえてきた。 『我を纏いし風よ。我の姿を変えよ』 例によってシルフィードの周りを青いつむじ風がまとわりつくとその姿を人間へと変えた。 「それが先住魔法ってやつか。さすがのわたしも生で見るのは初めてだね」 「この際だから説明するけど、わたし達は先住なんて呼び方はしないのね。精霊の力をちょっと借りてるだけなんだから」 そう説明しながら相変わらずすっぱだか状態でふらふらしているシルフィードを見て一つ気付いた。 「……って事は、あんたのも精霊とかの力を借りてるって事?」 となれば、さし当たって生命を操る水の精霊あたりかと検討を付けたが、もちろん違う。 「どっちかっつーと、オレ自身から力を引っ張り出してるっつった方がいいな。兎に角、別モンだ」 「あんなえげつない能力持った理由が今分かったよ」 理屈は分からないが、こいつの性格なら生物を無差別に老化させるような洒落にならない能力が付いても不思議ないととりあえず納得しておく。 「オメーらも頭にあの矢でもブッ刺せばスタンドが出るかもしれねーな」 まぁ別に頭でなくてもいいが、サバスが掴んで刺してきた印象が強いのだからそう言ったが、聞いた方は何やら誤解を強めたようだ。 「……頭に……矢……?」 ああ、そーか。人間じゃないのかこいつ。そりゃあ、あんな妙な能力持ってるわけだ。 やっぱり正真正銘の悪魔だ。人の皮を被った悪魔っていうし。 「聞こえてんぞ、てめー」 そりゃあ悪魔とかの類じゃなけりゃあ人を老化させるような能力が……聞こえてぇ!? どーやら、衝撃というか驚きが大きすぎて頭の中だけにおさまらずに声に出ていたらしく、一気に血の気が引いてフーケの顔が思いっきり青くなった。 「……い、一応聞くけど、どの辺りから?」 「人間じゃねぇとかその辺りだ」 ok。完璧に弁解の余地無し。思いっきり最初から聞かれていたようである。 そこで問題だ! このゴイスーなデンジャーが迫っているマチルダはどうやってこのピンチを切り抜けるか? 答え①-美人怪盗フーケは突如スクウェアクラスに進化する 答え②-そこのタバサかシルフィードが助けてくれる 答え③-老化する、現実は非情である わたしがマルをつけたいのは答え②だが期待は出来ない… 本にしか興味なさそーなタバサと食べ物の事にしか興味ないようなアホ竜は正直なところ助けになりそうにない…… となれば①を選びたいが何かの弾みでスクウェアになったとしても、こいつの力に敵うとは思えない…… で、一方のプロシュートの方は、さすがに人外扱いされるのも何なので『これでも、まだ人間だ』と言おうとしたが、全員そうだったから気にしないでいただけで、普通ならそれだけで死ぬなと思い直し、一応説明はする事にした。 「……あー悪ぃ。矢ってのは、こっちで言うマジックアイテムみたいなもんだ。っておい」 フーケの様子が何やらおかしい。目を明後日の方向に向け同じ事をブツブツと言っている。 「答え③、答え③、答え③……」 答え③と古くなったテープレコーダーのように小さく繰り返す姿を見たが、アルビオンに行ってもいないのに、まだこんな所で壊れてもらっては困る。 めんどくさそーに息を吐くと懐からある物を取り出し、それをフーケの顔の横まで持っていくと街外れの森に大きな音が響いた。 「~~~~○XX▲▽○ッ!?」 耳を押さえながら理解不能な言葉をわめいているが、鼓膜まで破れていないから大丈夫だろう。 たぶん。 「目ぇ覚めたか」 「……いつつ……雷が横に落ちた気分だ。というかなんでそんなモン持ってるのさ」 手に持ってる『銃』を見てそう言ったが答えは至極簡単だ。 「そりゃあギったからな」 それでフーケも理解した。銃士隊の装備だこれ。銃身にトリステインの紋章入ってるし。 盗られた方は今頃大慌てというやつだろうが、知ったこっちゃあない。例によって盗られた方が間抜けなのである。 「ま……弾も火薬もねーし、第一込め方なんて知らねぇから、今撃ったやつで最後だがよ」 「じゃあ、あんな事で撃つ事ないじゃないか」 一発しか撃てない以上もっともだが、それは撃つ方がただの平民とかである場合だ。この場合根底から使い方が異なる。 「分からねーか?」 「?」 分かっていないようなので、そのまま銃口を額に突きつける。まぁつまりそういう事だ。 「見えねースタンドと、見える銃。脅しに使うならどっちがいいか分かんだろ?」 わたしからすればどっちも変わらない。てか、まだ誰か脅す気かお前。と言いたげだが スタンドの事を知らないヤツからすれば銃の方に注意がいく。 武器として使う気はあまり無いが、牽制か脅しとして割り切れば十分利用価値はあるとしてアニエスから拝借してきたのだ。もちろん無断で。 後、新式だけあって売れば金になる。 「んで、矢ってのは普通の矢じゃあねーぞ。そいつを刺すとスタンド、オレが持ってるような能力が身に付く」 それを聞いた瞬間久々にフーケの目が光った。 こいつの言う『スタンド』とやらが刺すだけに手に入る、いわば魔法の矢。売るにしろ使うにしろ土くれとしては聞き逃せるものではない。 しばらくアレやらコレやらと考え少々顔がニヤけていたのか、横の方から呆れ半分の声で突っ込みが入ってきた。 「なに考えてるか大体想像付くが……死ぬかスタンド能力が付くかだからな。万が一見つけて使うってんなら遺書ぐらい残しとけよ」 「つまり?」 「矢に選ばれなかったヤツってのは確実に死ぬんだとよ。オレもあん時の事はあまり思い出したくねーな」 パッショーネ恒例の入団試験だが、見えないサバスに掴まれて矢を思いっきり刺されるのである。さすがに回想したいものではないわけだ。 「はぁ……そんなロクでもないモンよく使う気になったって感心するよ」 「知っててやったわけじゃあねー」 ライターの火を消して再点火するとポルポのスタンドが発動するなど、知らなければ今でも再点火しそうなのにスタンドの事すら知らなかった、まして入団が掛かっていた当時の場合はどうするかなぞ推して知るべしかなというところだ。 大体、あのド畜生が自殺したなどとは今でも信じられない。 名前が示すとおり、自分の手足喰ってでも生き残るようなヤツだと思っていたのだが。 あの面と体でナイーブとかふざけた事ぬかすなら、恐竜の絶滅原因は神経衰弱かPTSDだ。 そんな事を考えていると、後ろから急かすようなわめき声がしてくる。 「そんな事どうでもいいから、早くご飯を食べに行くのね!」 いつの間にやら服を着たシルフィードに腕を思いっきり引っ張られた。 一方のタバサはというと、座って本を読んでいる。 正直、見た目の年齢と精神年齢が全く逆である。 だがまぁ確かにあるかどうかすら知れない矢の事なぞどうでもいい事だ。 もちろん、メイジ兼スタンド使いなんぞが量産されては洒落にもならないから無い方がいいのだが。 とにかく、さっさと飯食ってクソくだらねー任務終わらせる方が先だ。よくよく考えたら戦闘の後始末やらで飯食ってない。 片手で回していた銃を懐に仕舞うと、まだ座り込んでいるフーケを片手で引っ張り上げた。 「お前らの方が詳しそうだからな。内容は任せる。………オメーはいつまでも本読んでんじゃあねーよ」 その言葉にきゅいきゅいと頷くシルフィードを見てタバサもやっとこさ本を閉じて立ち上がったが臨時北花壇チーム、現在四名。 その内訳、常時強気な元ギャング。食べ物に目が無く、この前ご主人に『脳が足りてないとまで言わないけど近い』と言われた伝説の韻竜 苦労人属性と不幸属性が付きはじめてきた現役盗賊、本ばかり読んでいて何考えてるんだかよく分からない正規隊員。 内容だけ見ると暗殺チームにも負けないぐらい個性的な面子揃いだが、プロシュートからすれば冗談じゃねー。という面子である。 暗殺チームの時はリゾットが仕切っていてくれていたからまだ良かったが こと戦闘以外に関しては他の連中があの具合なので自分で仕切らねばならないのだ。 戦闘になればそれぞれそれなりの実力があるんだから楽でいいんだが、まぁ全部順調に進めば苦労なんぞ起きないだろう。 にしても、あん時のミスタの拳銃捨てんじゃあなかったな。とかマジに思っているときゅいきゅいと声が聞こえてきた。 「ここね!このお店がこの街で一番良い匂いがするのね!」 その声で顔を上げたがシルフィードが一軒の酒場を指差している。 色々考えてるうちに街の中まで入っていたらしい。 シルフィードを先頭にして残りも店の中に入っていったが 「ボロいな」 「ボロいね」 「ボロい」 ものの見事に三人揃えて同じ感想を叩き出した。 実際、木でできた粗末なテーブルと奥にカウンターがあるぐらいでボロいと言われても仕方が無いが言われた方はたまったもんではない。 口を揃えてボロいと酷評してきた三人を見て太った中年の店主が思いっきり眉をひそめた。 「旦那、うちの店が上品な店じゃないって事ぐらいは知ってますがね。冷やかしなら別の店行ってくださいや」 「悪りーな、口が悪いのは生まれつきだからよ。客だ」 口だけじゃなくて性格も悪いだろーが。と後ろの方で一人そう思ったが決して口には出さない。だってそれが世渡りというものだと思うから。 まだ機嫌悪そうな店主だったが、タバサの杖と五芒星を見て一気に態度を変えた。 「貴族のお客様ですかい。これはボロいと言われても仕方ありませんや。お付の方も空いてる席におかけください」 というより、他三人をタバサの付き人か何かと判断したようである。 お付と言われて少々サバイバーな気分になったが、ここで騒ぎを起こしても一文にもなりゃあしないし 確かに貴族でもメイジでもなんでもありゃあしないのだからそう見られても仕方ない。価値観の違いとして処理する事にした。 フーケもメイジだがタバサみたいにデカい杖じゃあないのでお付扱いだが気にしていないらしい。 店主が料理を運んでくると、まずシルフィードがガッつき始めた。 タバサもそれに続いたが、早い。なんでこんなに喰うやつがこんなに小さいのか。 こいつでこの小ささならポルポはもっとデケーぞ。と思わざるを得ない。 「食ってるとこ悪いんだが本題だ。そのタマゴってのはどういう場所にあるんだ?」 料理いう名の要塞から早々に撤退し酒の攻略を開始したプロシュートがそう質問したが期待した答えは返ってこない。 「ほふはくひょうほはまほは、はひゅうはんはふ。ひはふふははんひはふほへ」 「食うか喋るかどっちかにしろよてめー」 「……………」 と、シルフィードが料理を優先させたためである。タバサも似たようなもので次々と料理を始末していっている。 フーケの方も己を失わない程度に酒を飲んでいるため、まぁ折角の休息だという事でもう少し時間を置くことにした。 「で、場所は」 「極楽鳥のタマゴは、火竜山脈。いわゆる火山にあるのね」 ワインの瓶を三本空けた頃ようやく料理攻略作戦が一段落付いたので再度質問したが、厄介な場所だという事が理解できた。 「そりゃあ、無理だな」 「おにいさまの言うとおりなのね。おねえさまは竜族の恐ろしさが分かってないの」 「こいつじゃあ、んな場所に行きたくねーわ。ったく……代わり探さねーとな」 「きゅい?代わりって他に誰かいるのね?」 「誰?服の事に決まってんだろーが」 そう言った瞬間、シルフィードが盛大に顔をまだ残っている料理の中へと突っ込んだ。 だが、そのまま何か食っているので大丈夫だろう。 「確か極楽鳥の巣って火竜の巣にも近いんじゃあなかったけか」 そのフーケの問いにタバサが頷くが、その横のシルフィードはいつの間にか空になった皿に顔を埋め泣きそうな声で文句を垂れている。 「あまり行きたくねーがな。火山ならオレの得意戦場だ。射程外から攻撃されない限りどうでもなるだろ」 「きゅい!あの力を使うのね?」 四本目のワインのコルクをスタンドで捻り取り瓶のまま飲みつつそう言うと、シルフィードが少々汚れた顔を上げたが、まだ途中だ。 「ただし、オメーらも巻き添え食って死んでもいいっつーんならな」 火山帯というからには外気温は相当なはずだ。恐らく氷で体を冷やす間もなく即死確定である。 「もう、おにいさまったらシルフィ達も巻き込むなんて冗談が過ぎるのね」 シルフィードは笑って流したが、横のフーケは気が気ではない。 (本気の眼だ………!) さっきまで体の中に入っていたアルコールはどこへブッ飛んだのやら一気に冷や汗が背中を伝う。 こいつ、場所を火竜山脈に限定すれば弱点が無い。 なにせ歩いているだけで半径200メイルの生物は全て枯れ木のように朽ち果て死に絶える危険物へと成り果てるのである。 放っておけばハルケギニアから火竜が居なくなる可能性の方が高いし、そんな爆弾の横に居るのは御免被りたい。 その対照的な二人を余所に今まで黙っていたタバサが口を開いた。 「その作戦は使えない」 「理由は何だ?」 「目的はあくまでタマゴ。タマゴまで壊したら意味が無い」 どういう事かと少し考えたが、答えを見つけて指を鳴らした。 「オレの能力、ザ・グレイトフル・デッドは無差別に生物を老化させる。動物だろーが、植物だろーが……例え卵だろーが、って事か」 「そう」 タバサは短く答えたが、プロシュートからすれば予想外である。 まぁ、卵なぞ進んで老化させようとした事もないしやろうと思った事もない。巻き込んだとしても気に留めた事すらないからだ。 殻に覆われた卵とて中身は不完全ながら生物である。老化する可能性の方が高い。 「確かにな。ブツを見つけてもそいつが化石になってたんじゃあ洒落にもならねぇ」 少なくとも極楽鳥の巣付近での能力発動は限定されるという事だ。 直で対処するか離れたとこまで敵を引っ張るしかなくなり、予測難易度が一気に跳ね上がった。 たまには能力全開でやらせて欲しいものだが、どうやら始祖ブリミルというのはスタンド使いには優しくないらしい。 もっとも、それを言うならローマの世界三大宗教の内の一つである神様も彼ら暗殺チームには優しくはなかったのだが。 「気付いたか?」 「そりゃあね」 突如プロシュートが小声でフーケに話しかける。 何に気付いたかというと、こちらへの視線である。 一瞬、フーケに感付いた賞金稼ぎかなにかと思ったが、視線の質が明らかに違う。 視線の元を辿ると、隅の方で一人座っていた老婆が思いっきりこっちを見ていた。 「……絶対目ぇ合わすんじゃあねーぞ」 「いぇっさー」 軽い返事だがフーケも目を合わせるとロクな事にならない事ぐらい理解できる。 色んな人間を見てきた二人だから分かるが、あれは『自分の力ではどうしようもなくなり他人にすがるしかない』という人間の目である。 目を合わせた瞬間形振り構わず厄介事を持ち込んでくる、ある意味捨て身の人種だ。 正直、こういうヤツが一番怖い。保身を考えずに動く人間は怖い物知らずだから、この場合相手が誰だろーとダメ元で頼み込むに違いない。 早急に撤退するべく勘定を済ませるべく店主を呼ぼうとしたが、何も知らないというか能天気なシルフィードが明るい声で言った。 「そこのお婆さん、さっきからこっち見てどうしたのね?お腹がすいてるのなら一緒に食べるのね。きゅい」 その声に反応したのか、老婆がよろよろとこっちのテーブルに近づいてくると、タバサの足元にひざまづいた。 「違います、違います、わたしは物乞いではありませんのじゃ。騎士様をこれと見込んで、お頼みしたい事がありますのじゃ」 もうスデに直触りを食らったような姿で泣きながら訴える老婆だったが、大人二人からすれば老婆の姿をした厄病神に他ならない。 「クソ……ッ!言わんこっちゃあねー」 「ごめん!……ってわたしのせいじゃあない!」 小声とアイコンタクトでそんな会話をする二人をよそに老婆がなおも泣きながら足元で泣いている。 そうしていると、店の奥から店主が出てきて、老婆の肩を掴んだ。 「商売の邪魔だ!余所でやってくれ!」 ベネ。そのまま摘み出せ。という期待を抱いていたが、そこに割り込むようにしてタバサの長い杖が入ってきた。 「騎士様?」 「かまわない」 タバサがそう言った瞬間、プロシュートもこの事に関しては諦めた。 事実上の移動手段はシルフィードのみであり、移動の決定権はタバサにあるためだ。 物なら最悪『ころしてでも うばいとる』が可能だが、シルフィードは生物であり高度な知能を持っている。 少しだけベイビィ・フェイスの息子の教育に苦労しているメローネの気持ちが分かったかもしれない。 「ったく……厄日だ」 そんな呟きを無視してタバサが老婆を促すと事の顛末を涙声で話し始めた。 「ミノタウロスねぇ」 「牛の化けモンだったけか?大昔だが、オレんとこもいたらしいな」 東地中海にある小さな島。クレタ島のミノタウロスの迷宮と言えば有名どころだ。 とにかく話を纏めると、十年ぐらい前にもミノタウロスが住み着いたが、その時は今と同じように旅の騎士に頼んで退治して貰った。 今回は領主に訴えたが、この界隈で子供の誘拐事件が流行っているらしく エズレ村の事に構っている暇が無いようで十年前と同じように頼みまわっている……という事だ。 頼むほうはいいだろうが、頼まれた方からすれば厄介事以外の何物でもない。 第一、最良の解決策がある。 「んなもん、逃げりゃあいいだろーが。話聞く限り何もねーとこだろ?化けモン以前に村捨てた方が身のためってもんだ」 超現実的な意見にタバサと老婆を除いた全員が同意するかのように首を縦に振っている。 その様子に絶望したのか、遂に老婆が泣き始めた。 「あの罰当たりな怪物は、最初の生贄にわたしの孫娘のジジを選んだのでございます……」 搾り出すようにそう言うとさらに大きな声で泣き始めた。 切れ切れにミノタウロスがわざわざ指名してきたからには村を捨てても狙われると言っているようで、村を捨てる気は無いようだ。 にしても、よくもまぁ直食らったような体でこれだけ泣けるモンだと感心したが、そう感心してばかりもいられない。 第一、こっちにも用がある以上は構ってられない。 何考えてるか知らないが、そのぐらいタバサも理解しているはずだと思ったが、どうも今日は予想が裏目裏目に出る日らしい。 唐突にタバサが立ち上がると「どこ?」と呟くと老婆を促し歩き出したからだ。 もちろん、シルフィードはきゅいきゅいとわめいて止めようとしているが、一度決断したタバサは断念する気配は無い。 「お、おねえさま!ダメなのね!風使いには危険な相手なのね!ああ、もう!二人とも説得して欲しいのね」 「なっちまったモンは仕方ねー」 「きゅい!?」 「わたしに決定権は無いから無理だね」 「きゅいきゅい!?」 完全に諦めたのか、金を机の上に置くとプロシュートとフーケも同時に席を立ち上がっている。 「どうせ修行とでも考えてるんだろうが……その、何だ。ミノ……モンタだったか?」 「タウロス」 一瞬『奥さん!』と声高らかに叫ぶミノタウロスの姿がその場に現れたが気のせいだ。 「ああ、ミノタウロスってのは火竜より強いのか?」 「それは……火竜のブレスはミノタウロスも一瞬で灰にするぐらいの威力があるのね」 「ってぇ事はだ。牛程度に手間取るようじゃあ火竜山脈なんぞの攻略は無理ってこった」 「まぁそうだね。諦めなよ」 まだ不安なのか色々言いたそうだったが、プロシュートが一つ提案を出してきた。 「少なくとも、オメーらが危なくなったらどうにかしてやるよ。この際だ、条件としてそうなったら先にアルビオンに飛んでもらうぜ」 無差別老化という能力の持ち主と、土のエキスパートであり三十メイル級のゴーレムを造りだせるフーケ。 この二人がいれば、少なくとも命はなんとかなる。そう思いシルフィードもタバサを追いエズレ村に向かい始めた。 臨時北花壇ご一行――本人の知らない所でタバサだけで倒せるか倒せないかのミノタウロス討伐賭けゲーム発生。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1554.html
召喚された日から数日。 彼の生活のスタイルは固まりつつあった。 早朝、まだ日も昇りきらぬ内に起床する。 あくびをかきながら寝藁の上で背筋を伸ばす。 ついでに身体を振るって張り付いた藁を落とす。 自分の支度が終わった事に満足すると、今度は彼女へと視線を移す。 ベッドの上には未だに起きる気配の無いご主人様。 彼女の体を前足で揺すり、それでも起きないようなら顔を舐めて起床を促す。 吠えるのは最後の手段だ。 一度それをやって寝ぼけたルイズの魔法によって、 寝起きの目覚まし時計よろしく破壊されそうになった経緯があるのだ。 その時のトラウマは未だに残っている。 彼女の支度が終了すると共に中庭へと出る。 そして投げた棒を取ってきたり、埋めた物を探し当てたりと一通り訓練を終える頃には、 他の生徒達も朝食を取りにぞろぞろと姿を見せるようになってくる。 それに合わせて彼女たちも食堂へと赴く。 たった数日、されど数日。誼を深めた使い魔仲間たちとの楽しい朝食の時間である。 それをぺろりと平らげると足早に井戸へと向かう。 大抵、この時間にはシエスタが洗濯をしている事を知っているのだ。 その合間に訓練で汚れた身体を洗ってもらい馬用のブラシで身だしなみを整えてもらう。 あまりの気持ちよさに、つい眠気に誘われてしまうがそうもいかない。 彼女が食堂から出た時に自分がいないとひどく不機嫌になるのだ。 名残惜しそうにシエスタの方を振り返りながら、食堂へとひた走る。 授業が始まると今度は退屈との戦いである。 なにせ犬なので内容がさっぱり分からない。 言葉は分かっても意味が全然理解できないのだ。 他の使い魔は主の傍に居られれば満足なのか大人しくしている。 だが彼は遊びたい真っ盛り。 出来れば外に飛び出して駆けずり回りたいのだがそうもいかない。 騒げば勿論烈火の如く怒られる。 寝息を立てていると凍りつくような凄い殺気が向けられる。 どうすることも出来ず、彼は銅像のように不動の姿勢を保つのであった。 授業の合間の休憩時間。 この時ばかりはさすがに彼にも自由が与えられる。 走り回りたいのは山々だが心身ともに疲労した彼にその余裕はない。 寝心地のいい日陰を求め歩き回り、そこでしばし横になる。 大抵、先客がいるのだが読書に夢中なのか、こちらに気を向ける事はない。 寄るでもなく離れるでもなくお互いがお互いの時間を過ごしているだけなのだが、 彼はこの時間が何故か好きだった。 ふと今日は疲れていたのか、深い眠りに落ちていた彼を誰かが揺すり起こす。 先客である青い髪の少女。 彼女が指差す先には自分を探す主の姿。 視線だけで礼を述べると一目散に主の元へと駆け戻る。 一日も終わり、彼は寝藁の上で横になる。 初めて召喚された日に受けた衝撃に比べれば刺激的とは言えない日々。 だが、この穏やかな時間は彼がいた世界に無い物だった。 きっと『幸せ』とはこういう物を言うのだろう。 変わらぬように見えて日々変わっていく世界。 明日はどんな楽しい事が待っているのだろうか。 未知の期待を胸に彼は穏やかな眠りに付いた。 「クソッ!」 自身のやり場の無い衝動を壁へとぶつける。 それでも抑えきれぬ苛立ちに身体が震えていた。 その男は食堂でルイズに突っ掛かってきた生徒だった。 上級生でもある彼はルイズの最近の素行に怒りを感じていたのだ。 ルイズが吹き飛ばした上の教室は三年の教室であり、 事故とはいえ本来ならば上級生に詫びの一つもいれるのが筋だ。 それをあろうことか今度は食堂に使い魔を連れ込む始末。 学園の規則など何処吹く風。 自分の家柄をいい事に完全に自分勝手に振舞っている。 彼はそう思っていたのだ。 「だけどよー、相手はヴァリエールの三女だぜ」 「うるせえな! それぐらい分かってんだよッ!!」 取り巻きの苦言に興奮気味の男が反発する。 階級社会というがそれは貴族の間でも変わる事はない。 ヴァリエール家の持つ絶大な権力の前では並の貴族など平民に等しい。 卒業後は父の後を継いでいくというのに、この程度の事で目を付けられては堪らない。 下手をすれば出世の目が全て絶たれてしまう事だってある。 「魔法も使えないくせに、ただ生まれだけで……!」 食い縛った歯からギリギリと音が洩れる。 前々から気に食わなかったが、それも後少しの事。 『サモン・サーヴァント』に失敗すればここには居られなくなる、 その間までの辛抱だと耐えていたのだ。 だが彼女は自身の使い魔を召喚し、何の問題なく契約を成功させた。 あの召喚さえ失敗していれば……! 「……ああ、そうだ。本人じゃなければ別に問題ないだろう」 そう呟いた彼の顔を取り巻きが覗き込む。 そして初めて見る彼の表情に寒気が走った。 憎悪に身を委ねた彼の顔は歪に笑っていたのだ。 彼が夢見た平穏な日常。 それが心なき者達によって踏み躙られようとしていた…。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/357.html
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「『直』は…素早いんだぜ」 崩れ落ちるようにして倒れるフーケとは対照的に老人が徐々に若くなっていく。 「え…あ…プ、プロシュートだったの…?全然気が付かなかった…!」 偽装するために廃屋にあった服に着替え髪の編みこみも解いているがその老人は紛れもなくプロシュートだった。 「まさか自分自身をも自由に老化させる事ができるなんて…」 キュルケなぞ半分放心した様子でそれを見ている。 「こいつ…やはり袋の中身見てやがったな」 プロシュートが倒れているフーケから馬車で渡された袋を取り出したのだが見事に封が破られていた。 「…なにこれ?何かのマジックアイテム?」 袋の中の石のようなものを見てルイズが聞いてきた。 「ああ、そいつはその辺に落ちてた石ころだ」 「………はい?あの時確かに『老化防止薬』って言ったわよね?確かに言ったわよね?」 「言ったな」 「小屋に入る前に『グレイトフル・デッド』っていうんだっけ?あれ使った時わたし達誰も老化しなかったじゃない」 「オレの周りだけ直に老化させたからな」 ああ、つまりこいつは―― 「使い魔が主人を騙したって思っていいのかしらね…!」 小刻みにルイズが震えておりこれは間違いなくキレかかっている。 「中身見られるの分かってて対抗策渡すマヌケが居ると思うか?」 「…なに?それじゃあ最初からミス・ロングビルがフーケって分かってたの?」 「完全な確証は無かったが、大体はな」 「どうして分かったのよ」 「窃盗ってのはどれだけ早く現場から遠くに逃げるってのが成否を分けるもんだ それをしないでたかだか馬で四時間程度で辿り着けるような小屋を潜伏先にするって事自体怪しいからな。オレなら夜通してでもしてでも遠くに逃げる」 プロシュートは暗殺チームだがパッショーネには窃盗チームも存在する。 そいつらの手口と今回のケースを比べてみれば『土くれのフーケ』と呼ばれる程のプロが単純な窃盗目的でこんな事をするはずが無かった。 「それに、こいつの目だ。オメーらや他の貴族達みたいな目をしてなかったからな。どちらかというと…オレ達に近い」 フーケもプロであり、それを貴族連中からなら隠し通す自信もあっただろうが、己と同類項ともいえる世界を生きてきたプロシュートには通用しない。 「確証が無かったからしばらく泳がせたが案の定って事だ」 「…わたしに破壊の杖を使わせてゴーレムを倒させたのは?」 「オレが倒したらこいつが出てこねーだろ。近付かれるとヤバイってのは知ってたみたいだしな」 プッツン 「こ、こここの犬ーーーーーッ!!そ、そそそれってわたしを囮にしたって事じゃない!!」 「成長できたって事でよしとするって事で、こらえろ」 「ご主人様を囮にする使い魔がどこの世界にいるのよ!こ、ここの生ハムーーーーーーーッ!!!!」 もう、今にも杖を取り出し爆破しそうな勢いだがギアッチョをなだめさせる時のように諭す。 「ゴーレムを倒したのはオメーにその『覚悟』があったからなんだぜ? その『覚悟』がなけりゃあゴーレムだって倒せてないし、フーケだってここに転がってねーんだからな」 まだ、納得できてないのかフーケを見たりプロシュートを見たりしている。 ゴーレムを自分の手で倒してそれがフーケ捕縛に直接繋がったという達成感と使い魔に囮にされたという思いが激しく戦っているようだった。 「ま…マンモーニから少し成長できたってこった」 「仲良さそうにしてるとこ悪いんだけど…これどうするの?」 そうキュルケが指差す方向にあるものははもちろんカラッカラに干からびたフーケだ。 「…任務は捕縛だからな、殺すわけにもいかねーし…杖ヘシ折って縄で縛っとけばいいだろ」 「あー…いや、それもあるんだけど……戻るの?これ」 「老化した後、戻すかどうかってのはオレの自由だな」 安堵したかのようにため息を吐くキュルケだが、別にフーケの事が心配なのではなく自分が万が一これに巻き込まれた場合の事を想定しての事だ。 そうこうしているうちにいつの間にかタバサが干からびたフーケを縛っていた。 スゥー というような音がして縛られたフーケが元の姿に戻り始める。当然気を失っているため起きはしない。 「戻しちゃってもいいの?」 「捕獲すりゃあ別に老化させる必要もねーからな。スタンドパワーも無駄に使う事になる」 「…スタンドパワーってなによ?」 「使い手の精神力みてーなもんだ」 「よく分からないけどダーリンの不思議な力の源、つまりわたし達が魔法を使う事と同じって事でいいのかしらね」 「まぁそんなとこだ」 言いながらフーケを担ぎ馬車に戻るが、軽くするためにもう一度老化させた事は言うまでもない。 学院長室でオスマンが事の顛末を聞いていた。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……美人だったもので何の疑いもせず秘書に採用してしまった」 早い話、居酒屋で飲んでるとこにフーケが給仕をしておりそれにセクハラをしても怒られなかったので秘書に採用したという事である。 コルベールが 「死ねばいいのに!」 と呟やいた気がするがプロシュートを除く三人は聞こえないふりをする事にした。 その後も続くオスマンの弁明だが曰く「あれがフーケの手だった」だの「尻を撫でても怒らないから惚れてる?」だの正直弁明どころか墓穴を掘っている。 ――がコルベールもそれに同調してるあたり同じ手に引っかかったらしい。 三人がホワイトアルバムよりも冷たい視線を送っている事に気付きオスマンが咳払いをして話の流れを変えようとする。 「さ、さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ、『破壊の杖』を取り返してくれた」 プロシュートを除いた三人が誇らしげに礼をした。 「フーケは、城の衛士に引き渡した…が何かしきりに鏡を見せてくれと言ってたようじゃが、『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」 オスマンがその手で三人の頭を撫で話を続ける。 「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろうな」 タバサはスデにシュヴァリエの称号を持っているらしく精錬勲章になるという事だが三人の顔が一斉に綻んだ。 だが、ルイズが興味なさそーに突っ立っているプロシュートに気付いた。 「……オールド・オスマン。プロシュートには何も無いんですか?」 「残念ながら、彼は貴族ではない…がこの前の決闘の処置が宮廷よりきてな」 「本当ですか?」 「うむ…処刑は免れたようじゃが流け…嘘!嘘じゃ!ジジイの愉快なジョーク…って痛い、痛いから」 『流け…』と聞いた瞬間放心したように杖を落としたが嘘と聞いて杖をオスマンに向け殴りつけた。 「…で、どうなったんですか?」 「う、うむ、何とかなりそうじゃの」 貴族が平民に決闘を仕掛け敗れたという点がグラモン家の『生命を惜しむな、名を惜しめ』という家風に反する事と そしてこれが一番の事だが、マルトー経由で 『二股かけそれが発覚。八つ当たりにメイドに魔法を使おうとし、それを止められ決闘になった』 これが決定打になった。 ただでさえ、貴族が平民に敗れて殺されたという事が平民の間で噂になっているというのに 平民のメイドに八つ当たりしようとして止められた事が噂として流れればグラモン家としては甚だ不名誉な事であり 最悪、他の国の貴族からの嘲笑の的になってしまう。 その恐れが『決闘の事は無かった事にしてください』という事にさせていた。 それを聞いたルイズが心底安心したようにため息を吐いた、ルイズなりに心配はしていたようだ。 「破壊の杖も戻ってきた事じゃし予定どおり『フリッグの舞踏会』を執り行う 今日の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。着飾っておくようにな」 キュルケが顔を輝かせながら着替えるべく外にでていく。やはりこの手の行事は大好きなようだ。 「オレは爺さんに聞きたい事があるから先に行け」 「まだ、心は少年なんじゃがのぉ…」 「…身も心もさらに老化させてろうか?」 ルイズが心の中で(どこがだ!)と突っ込むが時に気にせず外に出る。 「さて…何を聞きたいのかね?」 「あの破壊の杖は確かにオレの世界のもんだ。パンツァーファウストっつーもんで魔法の杖とかじゃあねぇ」 「やはりドイツと言うのはお主の世界のものじゃったか」 「ああ、それと、パンツァーファウストを掴んだ時に その使い方までもが瞬時に理解できた。その時にオレの左手の文字みてーなのが光ったんだがこれが何か分かるか?」 左手に刻まれたルーンをオスマンに見せる。 「変わったルーンじゃの…コルベール君に調べさせておくからルーンを写させてくれんかの」 「そいつは構わねーが…この世界から元居た場所に戻れる方法はあるのか?」 「別の世界から召喚されたという事自体が無い事じゃからの…わしなりに調べてはみるが掴めんでも恨まんでくれ」 (まだ戻れそうにねーか…) リゾット達がボスの娘を奪取しボスを倒していれば問題は無いが自分が戻った時にチームが全滅などという事態になっていては洒落にもならない。 その焦りがプロシュートに珍しくため息を吐かせていた。 プロシュート兄貴―未だ帰還手段不明。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2421.html
「UURRRRUUUOOOOOOOOOO!」 その場に聞こえてきた物は、人が出す物ではなく明らかに獣の物。 それも人の命なぞ、簡単に刈り取ってしまう猛獣の如き荒々しさがある。 普通の人間ならば、それだけで逃げ出しそうなものだが 生憎とここに居るのは、常時無反応なタバサと、常時唯我独尊なプロシュートである。 「てめー……仲間は居ねぇって言ったよな?」 メイジに向けそう言ったが、一足先にラリホーと夢の世界へ旅立っているので当然聞こえるはずもない。 であるからには、続け様にゴーレムに捕らえられている男達を見たのだが「ひぃ!」と叫ばれる始末。 彼らの目に映るその姿は、きっとミノタウロスと同じぐらい恐ろしい地獄の処刑人に違いない。 暗がりから、のっそりと巨体が姿を表したのは、子供の体ほどもある大斧を持った人の形。 ただ違うのは、人の頭たる部分に角が生えた紛れもなく雄牛のそれ。 近距離パワー型スタンドと言ってもいい程に人間離れした生物の正体は、いわゆるミノタウロスだ。 思わぬ本物の出現に身構えるタバサとフーケを他所に、乾いた炸裂音が一発その場に鳴ると ミノタウロスの額に銃弾が当たったが、分厚い皮に阻まれ勢いを無くして地面に落ちた。 「ちッ……やっぱ本物か」 さっき男達が捨てていった拳銃を拾って、ミノタウロスにぶち込んだのだが、魔法すら通さないのだから当然の結果だ。 銃を放り投げるとスタンドを発現させたが、間髪入れずにブッ放した事にさすがのフーケも呆れ気味だ。 「……本物でも偽者でもどっち道、撃ち殺すつもりだったな」 なにせ、いきなり額に弾をぶち込んだのだから、この人攫いのように偽者なら脳漿ブチ撒かれて即死である。 『やっぱ』とか言っているあたり、例え人でも構わないと思っているところが、一般的な常識からズレている証拠だろう。 一歩ミノタウロスが踏み出したが、それをガン無視してプロシュートが指でフーケを呼ぶと、一つ言った。 「オメー、先に戻れ」 「……は?あんた、さっき全員でやるって言ってたじゃないか」 自分勝手なのは今更分かりきった事だが、それでも、いきなりこう言われたのではどういう事か分かるはずもない。 予定通りなら役割は足止めなるはずが、いきなり帰れときたもんだ。 二体目のゴーレムを作ったとはいえ、それぐらいの精神力は残っている。 こいつが、わざわざ一番楽な方法を捨ててまで先に帰すような真似はしないだろうと 今一つ腑に落ちないのだが、もしやこいつ……と、しょーもない理由に気付いたような気がした。 「オメーがガス欠になったら、誰がそれ運ぶんだよ。オレはそいつ背負うぐらいなら今ここで始末するからな」 軽く言ったが、間違いなく本気だ。 そりゃあ、誰だって野郎……それも失禁したヤツなんて触りたくもない。 早い話、そのままゴーレムに運ばせようという魂胆だ。 さっきといい、わたしゃ何時から盗賊から運び屋になったんだー。 と、文句たれそうになったが、まぁ考えてみれば確かにミノタウロス相手に余力を残して戦うというのが無理な話である。 風系統のタバサはもちろんの事、今日スデにゴーレムを二回も作っている自分も このままゴーレムを長く操る事もできないし、足止めをやるとしてもそれで打ち止めだ。 そーなってくると、人攫い総勢七人を自力で連れ帰らねばならなくなる。 生憎、縛るような物は無いし、下手すれば精神力が切れたとこを攻撃されかねない。 案外、後の事も考えてるのかと少し関心したが、肝心の本人からすれば、純粋に汚ねぇから嫌だというだけでそこまで考えてはいない。 そもそも、手間をかけさせるならマジに一人だけ残して死体にしちまおうかとも考えていたりするわけで、知らぬが仏というのはこの事であろうか。 「分かってんだろーが……」 「はーい、はいはい。分かってるって」 溜息混じりにそう答えたが、この残虐超人に追われる事になるかもしれないなぞ考えたくもなかった。 朝起きたら……年をとっていましたなんてのは、はっきり言って性質の悪いホラーである。 いや、まだグールが襲ってきた方が撃退できるだけマシってやつだろう。 「それじゃあ、わたし達は先に戻りましょうか」 相変わらず縮こまっているジジをゴーレムの肩に乗せ、まだ夢の中のメイジも掴むと村へと動かしたが 途中、ジジがおそるおそるといった様子でフーケに問いかけてきた。 「あ、あの……」 「どうしました?」 今、このやり取りを見て、土くれのフーケだと気付くヤツが居たら是非とも拝みたいものだが 他とのやり取りに多少の差異はあるものの、ロングビルの仮面が剥がれる程ではないし、第一それはジジには関係無い。 「本当に先に戻って大丈夫なんでしょうか……、あんな小さいお方と……」 そこまで言ってジジが息を飲み込むと言葉を止めた。 メイジを手玉に取り、かなり荒い手段だが結果的に助けてもらったとはいえ、残されたもう一人はジジにとっては同じ平民である。 もしかしたら、メイジ殺しなのかもしれないが、ミノタウロス相手に丸腰でどうするのかと心配しているのだ。 「それでしたら、心配する事はありませんよ。一人はガリアの高名な騎士ですし、それに……」 今度はフーケが言葉を止めた。 なんと言っていいか、説明がつかないからだ。 性格は極めて自分勝手で、目的のためなら遠慮なく無関係のヤツをも巻き込み無差別老化とかいう訳の分からない能力を使う裏家業の住人。 これを、そのまま言うのはただの村娘のジジには少しばかり刺激が強い。 んー、と額に指を当てて考えたが、考えるだけ無駄なので適当に誤魔化す事に決めた。 「まぁ、とにかく大丈夫です。それより少し急ぐので落ちないようにしてくださいね」 当初の予定と違い、ガチでやるならば絶対無差別に老化させるはずと踏んだまでだ。 巻き込まれる前に射程外に出ないと、えらい事になりそうなので、少しだけゴーレムの速度を上げた。 遠ざかっているゴーレムを見送ると、再びミノタウロスの姿を見る。 体は灰色で全身筋肉ダルマ。おまけに、でっかい鼻と口から吐き出されている息が夜風に当たり、白く濁っている。 人間基準からすれば規格外もいいところだが、スタンド使いからすれば、まだ辛うじて規格内だ。 当然、分類は近距離パワー型で、得物が斧なあたり射程距離も似たようなものだろう。 したがって、取り乱したりする必要が全くなく、とりあえず破壊力はAだな。と思っているぐらいである。 横目でタバサを見たが、例によって無表情だ。 やる気があるのか、それとも緊張で固まっているのか判断付かないので、一応聞いておくことにした。 「さて、こうなってくると取るべき選択は二つある。①―この場所から速やかにバックレる。②―この牛野郎を始末する。オメーどっちだ?」 「②」 間髪入れずに返してきたあたり、腹は決まっているようだ。 それにしたって、ミノタウロスを始末するつもりが、実は偽者で、その偽者を捕まえ終わったと思ったら、わざわざ本物が出張ってきてこのザマだ。 なんというか、ただでさえ割りに合わなかった物がさらにレイズされて、さらにやる気になれない。 「ったく…追加報酬モンだぜ、こいつは。大体…報酬自体がシケて……いっその事、こいつの皮剥いだら売れねーか?硬いんだろ?」 こんな労働条件下では愚痴の一つや二つこぼしたって罰は当たらない。むしろ、利益は自分で確保しねーとと思うようになってきた。 弾や魔法を通さないんだから、鎧かなんかの材料で金にならねーかと考えてみる。 ただ、普段であれば直をブチ込んで始末するところだが、今回はどうもやる気になれない。 あの牛頭で体温の事に気付くはずはないだろうし、このパワーは脅威だが、射程距離が短いだけに何時でも殺れる。 でも、やっぱりやる気が出ない。ただ、銃とかで撃ち殺せるのならとっくにやっている。 この場合のやる気というのは、老化で始末する気が起きないという事だ。 もちろん、いよいよとなればブチ殺すのだが、あくまで他に手が無くなった時だ。 さて、他の手だが老化抜きとなるとグレイトフル・デッドで力一杯ブン殴るぐらいしか無い。 破壊力Bであの筋肉ダルマにダメージを与えるのも面倒だし、かといって銃弾が通らないって事は刃物も通らねーだろうし どーしたもんかと考えたが、そもそもこの横の青粒がやると言った仕事だ。 足場と視界の悪さが消えた現状、どこまでやれるか分からんが予定通りに任せてみるのがよさそうだ。 しかし、それは建前。 実際のところ、老化させたら皮なんぞボロボロになって金になんねーしなー。とか、割と本気で売る事を考えていたりもする。 現状、金には困っていないが、金なんて代物は手に入れられている時に手に入れておかねば必ず底を尽く。 手に入れられるか分からない明日の十万より確実に手に入る今日の一万を選ぶ。 少し貧乏臭いが、それが厳しい現実を生きてきた暗殺チーム故の考え方だった。 「それじゃあ、オレはそこで見物してっから仲良く殺ってくれ。マジに死にそーになったら手ぇぐらいは貸してやるが、一発でミンチになんなよ」 手を借りたいっていうのであれば、向こうから言うだろうし、言わないでくたばったら、それはそれで向こうの勝手だ。 欠伸を噛み殺しつつ言うと、適当な木に背中でも預けようと後ろを向いたが、一つ溜息を吐くと後ろへと振り向いた。 「牛公が……お前の相手はあっちだろーが」 ミノタウロスがメンドクセー事に大きく振り上げた斧をタバサではなくこっちに向けている。 一応スタンドの目で(どれで見ているかは本人もよく知らない)後ろは見ていたが 人がせっかく譲ってやろうという獲物を放置してこっちに向かってこられるのも少しばかり気に入らない。 まぁ、牛頭の考える事などいくら考えたところで理解できないだろうし、理解する気もない。 とにかく、こっちとしては相手する気は無かったが、このまま放置して掻っ捌かれるというわけにもいかず 振り向くと同時にスタンドを割り込ませたが、グレイトフル・デッドの腕がミノタウロスの腕に触れると同時にプロシュートが顔をしかめた。 グレイトフル・デッドの腕を割り込ませ大斧を反らそうとしたが、想像以上に重い。 そのまま腕を弾き飛ばして避けるつもりが、予想より動かず力任せに振り下ろされてきている。 老化にエネルギーを使っているとはいえ、それなりの格闘戦能力を有し こちらから干渉しているとはいえ、本来干渉されないはずの実体相手に明らかにパワー負けしている。 精々オーク鬼より多少強い程度と思っていただけにナマモノ相手にこうなるのは予想外だ。 「ヤッベ……!」 咄嗟に体を捻ると、さっきまで右肩があった場所を半端ない速度で大斧が通っていった。 (このパワー……スティッキィ・フィンガースどころじゃあねぇな……) 抉れた地面を見たが、体を捻るのが少し遅れていれば、間違いなく腕を一本もっていかれているところだった。 スティッキィ・フィンガースに一度切り離されかけたものの、射程距離外に出たせいかよく分からんが とにかく、せっかくくっついていたモンを、また無駄に飛ばされたりしたのでは洒落にもならない。 近距離パワー型にもステイッキィ・フィンガースやパープルヘイズのように、拳を食らえば決着ゥ!のような能力を持つタイプが多いので それに対応する為の癖もあってか受けてガードせず割り込ませて反らしたのだが、それも幸いした。 下手に受けていれば腕どころか、綺麗に真っ二つたったはずだ。 「やってくれるじゃあねぇか……牛公が、上等だ」 「不注意」 「ルセーぞ」 悪態を吐く横からタバサが突っ込んできたが、それに関しては返す言葉は無い。 どうやら殺し合いで余計な色気出すとろくな結果にならないというのは、どこの世界でも同じらしい。 最近そういう戦いを全くしていなかったので余計な考えが混ざるようになったのかもしれない。 こっちではワルドとやったのが最後でそれ以来ご無沙汰だ。 メンヌヴィルは、ギャング的に考えるならそれに値しない。 当の本人が油断しきっていてくれていたというのもあるし、なにより楽しんでいたというのが問題外だった。 その点、このミノタウロスはそういう余計な事を考えずに、本能だけの漆黒の意思だけで殺しにかかってきている。 もっとも、獣みたいにストレートに殺意をぶつけてくれた方がスタンド使いのように影から狙ってくるより余程有難い。 そもそも、色気を無駄に出すから、ヘンに曲がった所で殺し合うのが人間という生き物だ。 やはり世の中一番怖いのは人間である。 例えば、相手を小さくして蜘蛛の入ったビンに詰めるヤツとか、鏡の中に引っ張り込んで一方的に攻撃するヤツとか 息子を寄生させて栄養源にさせるヤツとか、鉄分操作して体の中からカミソリやハサミをブチ撒けさせるヤツとか数え上げたらキリが無い。 マジ、どいつもこいつもろくでもねー野郎ばっかだな。とか今更ながら呆れてきたが 何処かの誰かの『お前が言うな、お前が!』とかの抗議は、これまたどこかの風邪っぴきのような自虐などという高尚な趣味なぞ持ち合わせていないため全力でスルーだ。 とにかく、売られた喧嘩は買わねばならないし、貰った物はきっちり利子付けて返すというのが礼儀というものだ。 改めてミノタウロスを見たが、地面にめり込んだ斧を引き抜くと、何が起こったのか理解し難いような様子で斧の柄を見ている。 渾身の力を込めて放った一撃が、僅かだが勝手に逸れたのだから獣なりに理解できないというところか。 「死にたくなけりゃあ、今のうちに氷作っとけよ」 特に氷が必要な状況でもないのだが、あの牛相手に動き回って体温が上がれば老化する。 正直なところ、あの筋肉ダルマを正面から相手するのはスタンドを以ってしてもヤバイ。ディ・モールトヤバイ。 攻撃が決まれば決着が付くという点では、ミノタウロスもプロシュートも同じだが、他の二つ。 つまり、防御力と速度は向こうの方が圧倒的に上回っている。 スタンドで防御して紙一重というザマだ。 下手すりゃホワイト・アルバムの装甲でも耐え切れるかどうか分かったもんではない。(もちろん、その前に凍らせるだろうと思っているが) 老化で弱らせていくにしても、能力者本人としては関係無いし影響も受けないのだが問題はミノタウロスがタバサを狙ってくればどうかという事になる。 付かず離れずの距離で動き回らせ、少しづつだが確実に老化させ十分なところで直を叩き込む。 その過程で、タバサの方が先に老化して動きが鈍ったところにあの大斧が飛んできたら、さすがに拙い。 防御するにしても、前にワルドに食らった風の塊程度で、あの筋肉の塊が吹き飛ぶはずはないし、ダメージには繋がりはしない。 タバサぐらい小さければ避けに徹すればそうそう当たらないだろうが、そうなってくるとどちらが不利かは一目瞭然だろう。 喩えるなら、ミノタウロスが人間でタバサが蚊というところだ。 蚊がいくら人の血を吸おうと、直接的なダメージにはならず 対して、人間は多少梃子摺る事はあるだろうが、蠅如きは一撃で叩き落せる。 もちろん、そこまでタバサを過小評価しているわけでもないが、実際のところ実戦闘を見たわけでもないので、どの程度なのか今一つ把握できていないのだ。 そういう意味では良い機会かもしれないが、一発貰えば再起不能を通り越して名前の横に『――死亡』とかが付いてしまう。 なにせ、将来的な観点からすれば、かなりの大口のクライアントである。 パッショーネという看板を背負っていた頃は、報酬はともかくとして仕事はあったが、こっちではそんなツテなど全く無い。 悪い意味で古い世界だけに、裏の組織とかも探せばあるだろうが、そんな所に属しても前の二の舞だ。 色々条件は付くが、王位を追われた元王女という肩書きのタバサに乗った方が、何十倍かはマシだろう。 一瞬のうちに、七割の打算と三割の妥協が混じった考えを終わらせると指をゴキリと鳴らすと それと連動してグレイトフル・デッドも片腕を中に上げ、その鉤爪のような指を動かした。 後は、久々に老化ガスを垂れ流すだけだ。 錆び付いてなけりゃあいいがな。と、少し思わないでもないが、精神力の具現なのでたぶん大丈夫だ。 さて、準備はできたかとタバサを見たが、思わずその青い頭をグレイトフル・デッドの手で思いっきり掴んで持ち上げたくなった。 そうしなかったのは、そんな事やってる場合じゃないからだろう。 「言ったよな?氷作れってよ。話聞いてねぇってのが最もムカつくって知ってんのか?お前は」 もう、どこまでそのポーカーフェイスが保てるか、笑顔で一時間ぐらいアイアンクローを叩き込みたい。 なにせ、わざわざ氷作れつってんのに、何もしてなかったんだからそう思いたくもなる。 ギアッチョみたいに気が短い方でもないが、長い方でもないのだ。 そろそろ額のあたりに血管の一本や二本浮き出てきてもおかしくなくなってきたがタバサは一向に動じず近づいてきた。 見る人が見れば、脱兎の如く逃げ出すであろう状況下でも平然としているあたり、やはり大したタマである。 「わたし一人で大丈夫」 杖を握り締めながらタバサが言ったが、プロシュートは、なに寝惚けた事言ってんだ、というような顔をしている。 「まさかだろ?こいつはお前じゃあ無理だ。実力以前に相性が……チッ!」 言い終える前に二人が逆方向に飛んだ。 二人が飛んだ瞬間、轟ッ!という音と共にあの大斧が振り下ろされてきた。 「……悪りぃんだよ!」 獣に空気読めと言ったところで無駄だろうが、全くどいつもこいつも勝手ばかりしてくれる。 なんだか煙草でも欲しくなってきたが、もうストックは使い切って補充もきかない。 この際、安煙草だろうが葉巻だろうがニコチンが補充できれば何でもいい。 麻薬こそやらないが、世の禁煙の流れなぞクソ食らえだ。 肝心のミノタウロスの攻撃速度は大降りで、スティッキィ・フィンガースの拳には劣るものの、破壊力がケタ外れで避けるしか方法が無いというのがまた厄介だ。 日本には、『当たらなければどうという事はない』という諺があるらしいが、逆に言えば当たればヤバイという事の裏返しである。 それが分かっているから、さっさと老化ぶち込んでケリ付けちまおうとしているのに、片意地張ってるのか知らないが大丈夫だときた。 攻撃が効くならともかく、精々足止めぐらいしか手段を持たないタバサが出張ってもあまり役には立たない。 だから、ちと強情なタバサに対して皮肉が混じった文句が出た。 「なにが大丈夫だ?避けるだけで手一杯じゃねーかよ」 言いながらも視線はミノタウロスからは外さない。 獣の本能に満たされた目を赤く光らせ、涎を垂らしながら深々と刃先が地面に埋まった大斧を地面から引き抜いている。 そのミノタウロスの向こう側から、タバサの少しばかり感情の篭った感じの声が聞こえてきた。 「これは確かに危機でもあるけど好機でもある。 このミノタウロスを倒す事ができれば、自分の手で仇が討てる確率が上がる」 「…ったく……勝手にやってろ」 ここまで言って聞かないなら、何を言っても無駄だ。 その上でくたばってもそう選んだのだから関知するところではない。 激流に身を任せたような声を出すと、その返礼として呪文が返ってきた。 「ラグース・イス……」 タバサが持つ魔法の中では、単体に対しては特に大きな攻撃力を持つ魔法『ジャベリン』だ。 精神力を集中させ、詠唱を完成させようとしていたが、ミノタウロスとて獣とはいえ馬鹿ではない。 いや、獣だからこそ本能で危機を察知する能力には優れている。 「ヴォォオオオオオオオッ!」 ミノタウロスの咆哮で、周辺の空気が揺れたと同時に、大斧をタバサへと振り下ろすべく突進を始めた。 「イーサ………ッ!」 一直線に突っ込んでくるミノタウロスを目にしてタバサの顔色が一瞬変わり 瞬時にどう対応すべきかと選択肢を選ぶことを余儀なくされ呪文を詠唱するどころではなくなった。 ミノタウロスが取った行動は獣らしく実にシンプルッ! 魔法が放たれる前に仕留めてしまえばいいという簡潔極まりない、まさに本能の塊とでもいうべき行動だった。 もちろん、それだけではなく、万が一魔法が放たれても並大抵の魔法なら己のブ厚い皮膚で止められるという確固たる自信もあるはずだ。 体格差からすれば、爆走する機関車にも等しい。 これを止める事ができるのは、全てが静止する世界を創り出す事ができるギアッチョぐらいのものだろう。 タバサもジャベリンは放たずに避けるだけで精一杯だ。 放とうと思えば放てるが、それより前に頭の中であらゆる可能性をシュミレートしている。 仮にジャベリンを放ったとして、あのブ厚い皮膚に阻まれば精神力の無駄遣いになるし なにより、ミノタウロスが距離を離すまいと大斧を振りながら間合いを詰めてきている。 当たればタバサの華奢な体など一撃で粉々にできそうな、人の身では決して叶わぬ圧倒的な筋肉の暴力。 君がッ!死ぬまでッ!斧を振るのを止めないッ!と言わんばかりの無尽蔵かとも言えるスタミナ。 相手を殺し喰らうという、純粋なまでの漆黒の殺意。 襲い掛かる大斧を避け続けながら、このミノタウロスをそう評価したが、額を汗が伝う。 攻撃するにしろ、このまま避けるにしろ、今のままではタバサには打つ手が全く無い。 逃げるという事を頭をよぎったが、それはまだだ。 だが、考える時間が欲しい。三分、いや一分でもいい。 予想していたより遥かに強靭なミノタウロスを突き崩す事のできる方法を考えるだけの時間が。 そんな思いなぞ知らぬミノタウロスが何度目かの大斧を振り降ろそうとした時、重い音が届くと同時にその巨体が傾く。 突如として起こった異変にタバサも動きを止めると、視線の先には上着を脱いだプロシュートが立っていた 「ブルァァァァアアアア!」 後ろからの不意打ちによって、ミノタウロスが叫び声を上げたが、プロシュートとてそれで仕留めたとは毛頭思っていない。 無防備な脇腹に拳を叩き込んだのだが、返ってきたのはブ厚いゴムでも殴ったかのような手応えだった。 なんというか、生物を殴ったような感覚が全くない。 大抵のモノならそのまま殴り抜けれるが、手を抜いていれば弾き返されていたかもしれない。 「クソ…ッ!硬ってぇな……」 予想はしていたが、実際殴ってみるとバケモンだなと、まざまざと思い知らされる。 破壊力Bとはいえ、列車に備え付けられている固定された備品(椅子や運転室のパーツ)程度なら余裕で破壊できるグレイトフル・デッドである。 それのフルパワーで殴ったのに全く手応えがないのだから、紛れもないバケモノというやつだ。 ホワイト・アルバム相手にするのとどっちが厄介かと天秤にかけたが、今のところ針は拮抗状態というところか。 それでも、無防備なところを付いたおかげで、その巨体が傾むいただけマシだ。 派手に音を立ててミノタウロスが倒れていったが、ダメージが皆無なのは殴った本人が一番承知している。 「三……いや五分老化抜きで稼いでやる。その間に始末しろよ」 老化抜きで、あのミタウロスを相手できるリミットは多くて五分。 それ以上はスタンドパワー以前に本体の体力が持つかどうか分からず、老化を使うしかなくなる。 「どうして?」 タバサが短く言ったが、何故老化抜きでやる気になったのかという問いが含まれている。 今のが殴るのではなく、直触りを決めていれば決着は付いていたのだからそう思うのも無理は無い。 珍しく腑に落ちない様子のタバサを見て、プロシュートが少しだけ笑みを浮かべると、だが、あくまで真剣な声で言った。 「オメーが勝手にやんのなら、オレも勝手にやらせて貰うだけだ。 だが、ハッキリと言っておくぜ。この間に『成長』できなけりゃあ、お前が仇を討とうなんてこたぁ到底不可能だ!」 例え無茶な任務でも、血反吐吐くような思いをしながら任務をこなしてきたのが暗殺チームだ。 否が応でも、成長しなければ(スタンド能力的にも、精神的にも)ボスを暗殺する事などできはしないという事は誰よりもよく知っている。 目標が組織のトップという同系統の相手だけに、面倒な事に付き合ってやる気になったのだ。 「LSSON3。無敵のスタンド能力なんざねぇ。無敵に見えても穴の一つは二つは絶対にある!あの牛も同じだ、気合入れろよ~」 ホワイト・アルバムにもマン・イン・ザ・ミラーにも形こそ違うが不得手な部分や穴はある。 自分のスタンドを無敵などと言うヤツは、大抵自信過剰が仇になって自滅するようなヤツが多い。 汎用性の低い能力なら、なおさら不得意な部分は把握しておく必要がある。 そうすれば、相性が最悪な相手に出会っても、少なくともいきなり突っ込むという事は無い。 「ヴルァァォオオオオオオッ!」 のっそりと巨体を起こしながら、ミタノウロスが天に向け咆哮する。 振動によってリビリと空気が揺れたが、タバサが小さく何か呟いたような気がした。 「……りが…う」 元々、声のボリュームが小さい事と、ミノタウロスの叫びによって聞こえなかったが、そんな事気にしている余裕は無い。 「五分だ。その間にオメーの氷をブチ込め!いいな!」 プロシュートがそう言うと、タバサも杖を構えた。そして、それを見てプロシュートも構える。 ただし、構える物は武器や杖でもなく、人の精神の具現化。傍に立つもの。又は立ち向かうもの。 数あるスタンド能力の中でも異形と言うに相応しい姿が、その全身を出現させ その足代わりの手を付くと、跡を浮き出させるかのように地面に穴が開き、見えざるものがその場に現れた事を告げた。 「ザ・グレイトフル・デッド!」 ←To Be Continued
https://w.atwiki.jp/saikyoumousou5/pages/370.html
【名前】ナンバーゼロ 【属性】0位を目指す者 【説明】 このキャラは妄想スレのランキングにおいて0位にランクインすることを目指すキャラであり、 0位にランクインするための能力を全て持っている。 0位とは、ランキング1位より更に上の順位の事であり、0位より上の順位は存在しない。 そして、妄想スレのランキングは「強いキャラほど上位にランクインする」というルールになっているため、 0位のキャラは当然1位のキャラより強い。 しかし、従来の妄想スレのランキングに表示されるのは1位までであり、 0位は省略されてしまっている。そのため、従来の妄想スレ住民達は1位をランキングトップと思い込んで、 1位にランクインするためのキャラばかりを作ってきた。 故に、ナンバーゼロ以外のキャラが目指す「ランキングトップ」「ランキング上位」「ランキング最上位」とは、ランキング1位の事を指す。 ランキング1位を目指すキャラは非常に沢山いる。 例えば、書いてある系のキャラ。「最強になるために必要な全てが書いてある」「勝つために必要な全てが書いてある」 「ランキングトップになるために必要な全てが書いてある」などの能力を持つキャラの事である。 書いてある系のキャラのテンプレに書いてあるのは「ランキング1位になるために必要な情報」のみであり、 情報量の多さや表現の質に関わらず、0位にランクインするための情報は一切含まれない。このキャラより弱いのは明白である。 例えば、できない系のキャラ。「表現できないほど強い」「テンプレ化できないほど強い」「妄想スレに参戦できないほど強い」など、 「●●出来ないほど強い」という能力を持つキャラである。このようなキャラは「●●出来る強さ」の相手より強い。 できない系のキャラは殆どの相手に対してメタを取れるので、非常に強いと言える。 しかし、どれほど強かろうと、できない系のキャラの目的は「ランキング1位になること」である。 従って、できない系のキャラは残念ながらランキング0位になるための能力をこれっぽっちも持ち合わせていない。 そういうわけで、ランキング0位を目指すこのキャラにはあっさり負けてしまう。 例えば、真の考察に干渉するキャラ。真の考察とは、考察操作能力、ルール変更能力、書いてある系、 できない系などの能力を考慮した上で最終的に勝敗を決める考察の事であるが、真の考察をどのように操作しようと、 そのキャラが最終的に望むのは「自分がランキング1位になること」であるため、 ランキング0位を目指すこのキャラにはあっさり敗北して0位の座を譲り渡してしまう。 どんなに強いキャラだろうと、ランキング1位を目指している限り、 ランキング0位を目指すこのキャラより弱い。このキャラに敗北するのは明白である。 「0位」という、これまで誰も目指さなかった場所を狙うこのキャラこそ最強の名に相応しいと言えるだろう。 尚、考察の結果このキャラが0位にランクインする事が決定した場合、 ランキング0位の省略が解除され、そこにナンバーゼロの名前が載る。 これが認められない場合は、ランキング上の適当な位置にランキング0位のキャラ専用の欄が設置される可能性が高い。 【長所】新しい試み 【短所】やっぱり駄目かもしれない ◆考察記録--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 242 ◆rrvPPkQ0sA 2017/09/23(土) 00 36 29.77ID m0ScmivV ナンバーゼロ考察 0位という発想はあったが、ランキング操作にならないようにうまく書き出せなくて諦めたことがある。 目的いじる系に似ているが、結局のところ「1位を目指しているキャラよりは強い」と書いてあるにすぎない。 書いてあるかどうかで決まるのはうんじゃらげみたいなもんだ。 0位にランクインするための能力を全て持っている。 能力どまり。かつての能力非依存メタの壁は、「これは能力ではないので能力無効化で無効にできない」と書いてあるかで別れた壁。 最近は「書いてある」こと自体を能力と再定義していたりするので厳密ではないが。 書いてある系のキャラのテンプレに書いてあるのは「ランキング1位になるために必要な情報」のみであり、 情報量の多さや表現の質に関わらず、0位にランクインするための情報は一切含まれない。このキャラより弱いのは明白である。 真の全知を持っていたら0位の存在も知っている。書いてある系には当然真の全知も含まれる。 勝利するうえで0位を目指すことが必要だと知っていたら当然0位を目指すだろう。 「1位になるためのことがすべて書いてある」≠「相手に勝利するためのことがすべて書いてある」と主張しているわけでもない。 この区別の議論はサイキョー参照 ナンバーゼロに負けても次点で1位になれる、という理屈は真の強者には通用しない(とされることが多い)。 Last-Winnerあたりが意味もなく粉砕されてるわけで 真の強者はナンバーゼロに勝っても負けても1位を目指せるのだから、ナンバーゼロを倒せるなら倒すだろう。 というわけで書いてある系にはテンプレ通りの強さを発揮できず負けるとする。 例えば、できない系のキャラ。 このようなキャラは「●●出来る強さ」の相手より強い。 できない系のキャラは殆どの相手に対してメタを取れるので、非常に強いと言える。 しかし、どれほど強かろうと、できない系のキャラの目的は「ランキング1位になること」である。 従って、できない系のキャラは残念ながらランキング0位になるための能力をこれっぽっちも持ち合わせていない。 そういうわけで、ランキング0位を目指すこのキャラにはあっさり負けてしまう。 「0位を目指している」と9文字で書けるような強さができない系に勝てるとはあまり納得できない。 上で表現できない強さは表現できる強さより強い、と定義してあるのに。 真の全知を持っていない相手なら自分より強いできない系にさえ勝利できる程度の能力。 自分より強いキャラに勝つ能力は基本的に信用ならないので厳しく見る。 素早さについては不明。0位を目指していることによる加点と能力止まりによる減点で相殺して、 全て書いてある級とみなす。適当だが俺が考察人だ その素早さでできない級でも勝ちを譲らせるかもしれない勝利能力、 先手を取られているのに敗北していない防御力。 245格無しさん2017/09/23(土) 00 58 49.70ID m0ScmivV ×妄を極めし者 できない系じゃない ×嘘を暴く美脚 0位になるための能力をすべて持っていない ?サイキョー 「強い順に並んでいる」vs「総当たりで勝ち星が多い順に並んでいる」 優先度はともに0。 妄想スレの順序付けについて優先されたほうが勝つだろう。 (サイキョーは真の考察には干渉していないと主張したいところだが、 勝ち星を増やす行為を真の考察に干渉していると主張するならナンバーゼロが有利になるかも) ×紅蓮の格闘王 ナンバーゼロは0位を目指して勝利するかもしれないが、ナンバーゼロの名前は0位を目指していないので敗北する。 ×最強スレ原器 原器は本質的な考察に干渉はしていない。できない系でもない。 むしろこいつが0位みたいなもんだろ。書いてある級を超える素早さがあるので負け ×赤き稲妻 できない系じゃないし真の考察も干渉していない。ただ早くてテンプレごと破壊されるだけ。 〇脚本上の勇者 できない系。強いことはさんざん書いてあるが勝利についての記述は甘いか。 ×彼ら、或いは我々 「全体」の中には真の全知も含まれている ×神と天使たち クラウンさんが「必要ない」強さだからできない系に当てはまらない。 ×神に愛された男 神の目的はどうみても「自分が1位になること」ではない。 神に愛された男をあらゆる全ての考察・戦闘で勝利させることだ。 書いてある級には負け通し、という点ではDeath Knellに近い強さなのでそこら辺から。 〇ハンニバル 〇キペリヌ 0位は創造主なので勝てる 〇完全後攻者 先手を取ると引き分けになることを察知。先手を取らずに勝利できる能力でも使おう。 〇Death Knell Death Knellは素早さが遅いので、先手を取れる。自分のテンプレを魅力的なものに変えて勝ち。 ×狭間の人 (弱)表現できない級全能、よってナンバーゼロのテンプレを読むこともできる。負け ×http //imgs.link/bqJjno.jpg 抽象的でない能力、なんて持ってない。再生遅延負け 越前達には引き分け。自然とBチーム以上には負けるので、コンバット越前と同列
https://w.atwiki.jp/shfarts/pages/828.html
マシンゼロホーン 商品画像 情報 登場作品:仮面ライダー電王 定価:4,536円 受注開始:2014年01月24日(金) 16 00 受注締切:2014年04月06日(日) 23 00 発送開始:2014年06月21日(土) 商品全高:約150mm 付属品 その他:交換用手首左右各2種(アルタイルフォーム、ゼロフォーム用)、交換用ミラー左右各1種、交換用ハンドル左右各1種、固定用台座 アイテム概要 ゼロライナーの運転席を兼ねるバイク型のコントローラー。ゼロノスカードやライダーパスをキーボックスに差し込むことにより起動する。電王のマシンデンバードと外見、スペック、機能は同じだが、後部の集電装置・ゼロギャザーの形状と、フロント部にタンクローリーさえも一突きにする突撃攻撃用の2本の角・ゼロゼロホーンが装備されている点が異なる。『EPISODE RED』では、ベガフォームの変身解除の時、デネブが運転したことがある。 商品解説 TAMASHII NATION 2012で参考出品された試作品が魂ウェブ商店限定発売決定。 良い点 悪い点 不具合情報 関連商品 仮面ライダーゼロノス アルタイルフォーム 仮面ライダーゼロノス ゼロフォーム マシンデンバード コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4610.html
甲賀忍法帖より甲賀弦之介 ゼロの視線-01 ゼロの視線-02 ゼロの視線-03 ゼロの視線-04 ゼロの視線-05 ゼロの視線-06 ゼロの視線-07